Good night Dear (ページ15)

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Episode 7. ページ15

- Your Side -

着慣れないパンツスーツ、綺麗めなパンプス。
少し重たい気持ちを抱えて、スタッフルームの扉に手をかける。

「はぁ…。」

「あ、A先生！おはようございマス！」

「お！審査会、よろしくお願いします！」

ため息をつきながら足を踏み入れた私とは裏腹に、ミンさんと冬木先生は明るく声をかけてくれる。やる気満々、といったところだろうか。

「どうしたんです！そんな暗い顔して！」

「喜多見先生…。すみません、なんでもないです。」

住民の命を救うはずの組織が、解体されかけている。この組織があれば助かる命がきっとある。その事実が、なによりも私を苦しめていた。

だってきっと、あの日だって…。MERがあれば…。

嫌な想像を頭の隅に追いやり、笑顔を作って顔を上げる。

「あ、そういえば。A先生が来る前に、警察の方がいらっしゃいましたよ。」

「え？先日の衝突事故の件ですか？」

「ええ。上野さんの娘さんもいっしょに。」

衝突事故の日、喜多見先生と私がバスの乗客の手当より優先すると決めたトラックドライバー。どうにか一命を取り留めたと聞いていたが、なんで娘さんが。

「なにか、あったんですか。」

「実は、あの事故は上野さんのせいじゃなかったそうで。」

「え？」

「道路を飛び出した子供を避けようとして、バスに突っ込んでしまったみたいですよ。」

言葉を失う私に、冬木先生がにこやかに続きを説明してくれる。

「ええ、だから…。

あなたは、間違っていなかったんです。」

そう言った喜多見先生の目を見つめれば、強い眼差しが応えてくれた。

「大丈夫、あなたの決断は正しい。」

その〝大丈夫〟に込められた意味を知るのは、もちろん私と喜多見先生だけだろう。

「…はい。」

彼の言葉に頷き、審査会の準備へと戻る。
視界の端には、浮かない顔をした比奈先生。