Good night Dear (ページ12)

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そんな沈黙を破ったのは、他の誰でもない彼女だった。

「でも、私たちにどの命を助けるのか決める権利はないですよね。私たち医者にできるのは、患者さんの容態を確認して、重症度が高い方から治療を行う、ただそれだけです。」

「…そんな理想論じゃ、MERは維持できません。今回の出動を踏まえ、関係機関を集めて第1回審査会が開かれることになりました。場合によってはこの審査会で、MERは解散ということも有り得ます。」

「なくなる…かもしれないんですか！？」

ほんのわずかに声のトーンがあがる弦巻先生とは対照的に、ほかのメンバーは静かに肩を落とした。

「あとは、喜多見チーフのプレゼン次第かと。」

「えーっ、そういうのは苦手なんすよね。」

「大丈夫ッスよ！喜多見チーフなら！」

「A先生も手伝ってあげてください！」

ミンさんの一言に、暗い表情で資料を読んでいた彼女が目を丸くした。

「え～っ！私！？分かりました…！ほら、喜多見先生！」

「A先生が居るなら、安心ですね！頑張ります！」

勢いよくガッツポーズをする喜多見チーフ、その横で微笑むA先生。その姿を見守るメンバーたち。
〝元〟同期であるという2人の間には、どこかあたたかく、居心地が良くなるような、独特の空気が流れていた。

「弦巻先生、メンバーの労働環境を確認したいので、案内していただけますか。」

「あ、はい。分かりました。」

そんな彼らの姿から目を背け、研修医である彼女を連れて部屋を出た。