Good night Dear (ページ2)

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Episode 1 ページ2

-Otowa Side-

AA

東京海浜病院、心臓血管外科。

翌日。
もう一度目を通した資料。

僅かな違和感を胸に抱きつつも、式典の会場へと足を進める。

綺麗な文字で刻まれた、生年月日と出身大学は、彼女と音羽がかつての同級生であることを示していた。

毎日顔を合わせていた学生時代。
卒業後、だんだんと連絡を取らなくなり、今ではどこの病院で医師をしているかなど、知る由もなかった。

配属希望理由

ひとりでも多くの命を救うため。

あまりにもまっすぐなその理由は、〝AA〟という1人の心臓外科医が、かつての同期だということをこれでもかという程に示す。

単純かつシンプルなその文字は、なにか複雑な感情を抱いているような、確かなエネルギーを放っていた。

あと少し、もう少しで迎える再会の瞬間。

なんと、声をかければいいのだろう。

久しぶり、だろうか。

元気にしてた？だろうか。

それとも

なにがあったの、だろうか。

数年越しの再会にしては、馴れ馴れしすぎるような台詞しか浮かばない自分に思わずため息をつく。

ちょうどその時、ポケットに入っていた仕事用のスマートフォンが小さく音を立てた。

〝＿＿TOKYO MER 出動要請(中規模医療事案) 東京都港区芝浦五丁目衝突事故〟

今頃、東京都知事との発足記念式典の最中だったはず。
目に入った一通の通知は、彼らの初出動を示すものだった。

僅かに過ぎる嫌な予感を頭の隅に押しやり、元来た道を走り出した。