Good night Dear (ページ1)

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Prolog ページ1

-Otowa Side-

午後の暖かい日差しに包まれた、とある春の日。

「そういうことだから、よろしくね。」

場所は霞ヶ関。厚生労働省医政局。
厚生労働大臣、白金眞理子のこの陽気に似合わない淡々とした声が広い部屋に響いた。

「承知致しました。」

手元の資料から顔を上げると、ただそれだけを告げて、上司の久我山と重苦しい部屋をあとにする。

「お前がそんな顔するなんて、らしくないな。やっぱり医療組織の解体は気が乗らないか？」

様子を伺うような、薄い笑みを浮かべた彼は、静かな長い廊下でそう言葉を零した。

「いえ、やるべき仕事を全うするまでですから。」

そう返した音羽の言葉に満足したのか、はたまた胸の内を読むことを諦めたのか、彼は何も言わずにその場を去っていった。

気が乗らない。

とは似たような、名前の知らない感情が流れ込んでいく。

数十分前、白金大臣から受け取った経歴書にもう一度向き合う。

忘れたくても、忘れられない名前が。

もう何度も、目にしたことのある文字が。

かつての面影を、まだ残す証明写真が。

手元の白一面に綴られていた。

思わぬ再会。

いつの間にか止まっていた時計の針は、動きはじめていた。

思わず、胸が高鳴った。