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はじまり ページ1

『でかければでかいほどいい。適当に飯屋に入って待っててくれ』


その助言を元に辿り着いたのは街のシンボルになっている酒屋だった

この国で2番めに大きい都市であるここは冒険者たちが集う街で有名だ。その分街の特性自体も1番栄えている王都とは違い住民は逞しくおおらかだ

酔っ払いのおじさんが機嫌良く道案内してくれた店に着く

昔から存在することを示すかのような傷だらけの木扉の隙間から既に喧騒と溢れんばかりの音楽が微かに洩れている


軽く礼を言った後、意を決して重く大きな扉を開けると店内側の扉についていたのか大きなベルの音が来客をガランゴロンと伝えてくれた

「いらっしゃい嬢ちゃん!こんな夜に1人かい?」

「後から連れが1人…きます…」

「おうそうかい!じゃあ、」

近くにいた体格のいい店員が己のスキンヘッドを撫でながら店内を見回す
それに倣って視線を向けるとかなり広い店内のテーブルはほぼ埋まっていた

新規客の私の様子を伺う人やご飯や酒を片手に楽しそうに過ごす人、大盛りの食事をサーブしつつ人に溢れた店内を縫うようにあるく店員たち、奥の壁際では弦楽器楽団が楽しげに音楽を奏でている


そのどれも、この瞬間に起きている事象全てが新しく素晴らしい
一面の情報量の多さに目が輝いてしまっているのが自分でもわかる。しょうがない、田舎者には全てが眩しかった

胸の高鳴りと共に斜めがけしていた鞄の紐もぎゅうと掴む、そこには確かに興奮があった


「おいシーザー!そこどきな!横のテーブル行けビールまけてやっから!」

「しゃあねえ2杯な!」
「馬鹿野郎1だよ!」

スキンヘッドの男性が少し離れたテーブルにいた男性に声をかけ、喧騒の中交渉が成立したみたいだった

ついてきな、といわれそのテーブルまでくると途中だった食事の皿を横のテーブルに寄せ(横のテーブルの人とシーザーさんは知り合いのようだった)腰につけていた手ぬぐいでぐいぐいと空いた空間を磨いてくれた

「ここ座んな」
「…ありがとうございます」
「こんな輩ばっかりだが、女癖悪い奴からは遠のけたから安心しろ」

小声でそうささやかれ店員を見るとバチンとウィンクされる、呆けてシーザーさんの方をみると聞こえていたのか同じくウィンクを頂戴した

「…ありがとうございます!」


噂で聞いていたよりも都市部の人は暖かい!

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作者名: | 作成日時:2024年3月5日 15時

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