本気 ページ8
「飛鳥羽……⁉何の冗談だ?」
玉壺は急に慌て始めた。Aは構わず続ける。
「もしかしてだけど分からなかったあ?僕、禽の呼吸を使ってるんだけど。
そんなことにも気が付かなかっただなんて、お前のご主人様は頭に汚物を詰める血鬼術でも使うのかな」
ちろりと舌を出して玉壺を挑発するA。
「そんな……殺し損ねたというのか、この私が!そういえばお前のその羽織!飛鳥羽家の者だという印ではないか!」
「上弦になる条件に頭の良さと記憶力っていうのが無くて良かったねえ。僕の親の仇がこんな馬鹿だったなんて、虚しいなあ」
そうか。こんなにも胸糞悪い奴だったのか。そうでなければ人喰い鬼になどならないとは思うが。
地獄へ堕ちろ、最後の一秒まで痛みで苦しめてやる。
ぐるぐると腹の中で渦巻く怒りがAに力を与えた。冷静に、しかし憎しみは忘れず、仇が灰と化すまで刀を振るう。
「何とでも言うがいい。お前らを今宵確実に殺し、同時に飛鳥羽家を根絶やしにしてやる。"血鬼術 陣殺魚鱗"」
木々を薙ぎ倒しながらあちこちに動き回る玉壺の動きを、時透とAは背中合わせで見極める。
「さあどうかね、私のこの理に反した動き!鱗によって自由自在だ、予測は不可能。私は自然の理に反するのが大好きなのだ!
髪が長いお前は、醜い頭を捥ぎ取り美しい頭をつけてやろう。飛鳥羽の末裔は、その貧相な手足を太く逞しい蛸の足に付け替えてやる」
玉壺が二人に拳を振り下ろした時、Aと時透は全くの別方向へ跳んだ。
玉壺はまず時透にとどめを刺そうとした。
「霞の呼吸 漆の型」
“朧“
目の前から時透が消えた。と思えば背後に立っている。そこを殴ろうとすれば彼はすでに消え、ゆらりと木の影に立っている。
その動きは玉壺に、霞に巻かれているような錯覚を与えた。
その時、上空で声がした。
「一人で精一杯?上弦の伍。まさかとは思うけど」
玉壺はバッと上を見上げた。空から急下降してくるAは宛ら
「自分だけが本気じゃないとは思ってないよね」
猛禽類のようで
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作者名:ほんわか若頭 | 作成日時:2021年2月10日 12時