赫刀 ページ50
茶々丸が背負う容器から、針のついた試験管が飛び出た。それは柱達に刺さり、血液に薬を送り込む。
みるみるうちに覆われていた視界が開け、頭痛も治まった。珠世が発明した薬の影響だろう。
「無駄な足掻きをするな‼潔く死ね亡者共‼」
怒り狂う鬼舞辻の爪は地面を抉りながら柱達を襲う。
周囲に目を配ると、伊黒が座り込んでいるのが見えた。彼が持つ刀身は赫く染まっている。
「禽の呼吸 隼の翔 疾風迅雷」
冨岡も斬りかかるが、そこから伊黒の姿は既に消えていた。地面に浮かぶ影は宙を舞う伊黒のものだった。
鬼舞辻は彼を目掛けて爪を伸ばすが、伊黒の身体は空中で軌道を変えた。
突如、鬼舞辻の腕が斬れた。断面はでこぼこしており、少なくとも柱が持っている刀のどれにも当てはまらない。あの断面を作ることができるような刀を持っている隊士に心当たりがあった。
鬼舞辻が爪を振り回すと、三人の隊士達が姿を現した。善逸、伊之助、カナヲだ。
「お前たち、生きていたか……!」
「死んでたまるかボケェ!」
そう叫んだ伊之助は、持っていた愈史郎の札をばらまいた。
「いっぱい拾ってきてんだぜ‼何枚切られても山ほどあるんだよ!お前の攻撃なんざ……」
「無駄口叩かないの!」
誇らしげに刀を振り回す伊之助に爪が襲いかかり、彼はそれを間一髪のところで避けた。それを叱りつけたAと伊之助を一撃で仕留めようと鬼舞辻が構えたところを、伊黒がその両腕を切断した。
伊黒の赫刀に斬られた鬼舞辻の腕は、再生速度が格段に下がっている。カナヲと善逸は再び札を額に貼って攻撃を始めた。
人数が増えたことで、柱たちにも少しの余裕ができる。悲鳴嶼、冨岡、不死川も次々と刀身を赫く染めた。
夜明けまで一時間三分という報せと同時に、柄を握る手に渾身の力を込めたAの刃も、燃えるように赫く、熱くなった。
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作者名:ほんわか若頭 | 作成日時:2021年2月10日 12時