似ている ページ40
「……お、お父様に、似てるんですね」
三つ編みをいじりながら、少女は千寿郎に話しかけた。
「そうなんですかね。確かに、髪や目の色は似ているのかもしれません」
(いや、分身かってくらい似てますけど)
五人は心の中で呟いた。
「兄は、父によく似ていました。僕も兄とそっくりだと言われたことはあります。兄のこと、飛鳥羽様から何か聞いていますか?」
その問いかけに、子供たちはビクリと肩を震わせた。
「聞いたというか、会ったことがあります」
沈黙を破るようにして、三つ編みをいじる手を止めた少女が言った。
「そうだったんですか」
「彼がこの世から去った夜、私は彼の精神を……壊そうと、したんです」
千寿郎は一瞬目を見開いた。
「精神?」
「はい、話せば長くなるんですが……」
少女は、饜夢とのことを千寿郎に話した。列車で目の当たりにした、煉獄の無意識領域のことや勇姿も、余すことなく語った。
「あの人は、本当に強い人だったんだと思います。Aさんも言ってました。勇敢で、炎柱の称号に恥じない人だと。ああなりたいと日々口にしていたんです」
「そうだったんですね。教えてくださってありがとうございます。
兄もよくAさんのことを話していましたよ。いざという時の機転と、勇気と、根性があると言っていました」
だからきっと、帰ってきます。
千寿郎は五人を安心させる、暖かく確かな声で言い切った。
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作者名:ほんわか若頭 | 作成日時:2021年2月10日 12時