三人で ページ36
猗窩座はAを凝視した。初めて出会った時は、柱の称号を掲げている事がまるで信じられなかった。しかし、猗窩座は攻撃されるまでAがいることを一切感じ取れなかった。
「すごい、すごいぞA！圧倒的弱者だったお前が、俺に冷や汗をかかせるほどに強くなっていたなんて！」
猗窩座は興奮していた。同じ柱である煉獄と比較し、技の強度や身体の使い方が全くなっていなかったAが、自分に一撃を食らわせたのだ。
「ありがとう、全く嬉しくないよ」
Aは作り笑いで返し、刀を構えた。
「お前のご主人は何も仰らなかった？飛鳥羽の人間をみすみす生かした事に関して。それが無ければ上弦の伍は死ななかったかもしれないのにね」
「……Aはよく喋るんだな。俺も喋ることは大好きだ、でも、今のお前は余計なことばかり言う」
にやりと口元を吊り上げたAに、猗窩座は額に青筋を浮かべた。
「僕もお前と喋るのは微塵も楽しくないよ、不毛だから。
禽の呼吸 雁の羽 一雁高空」
ほう、と猗窩座は溜息をこぼした。大怪我はしないと言うほどなのだから、きっと自信があるのだろう。恐らく“流星群光”は避けられる。
「血鬼術 脚式 飛遊星千輪」
周囲諸共破壊するほどの威力を発する蹴り技だが、Aの姿は既に上空には無かった。
「お前の蹴り技なら、僕はもう避けられるよ」
少し切れた頬を親指で拭い、Aは舌を出した。猗窩座を煽ることでAを集中的に狙わせ、二人に攻撃する余裕を与える作戦だった。
「素晴らしい闘気と技だ！あの世で杏寿郎はさぞ喜んでいるだろうな」
「すぐに確認させてあげるね」
Aは次々と技を繰り出し、冨岡や炭治郎の為に隙を作る。
(痣が出ているとはいえ、相当な量の鍛錬を積まなければ上弦の参に太刀打ちは出来ないだろう。
Aは、確実に強くなっている。お館様が悲鳴嶼との特別任務を課すほどに)
冨岡は、猗窩座に斬りかかりながらAの成長に感心した。炭治郎も冨岡の後に続いた。
「水の呼吸 漆の型 雫波紋突き」
「ヒノカミ神楽 輝輝恩光」
「クソッ……！」
(俺も、守られてばかりでは面目が立たない)
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作者名：ほんわか若頭 | 作成日時：2021年2月10日 12時
