お仕事 ページ22
Aに連れられ、伊之助は訓練場へやって来た。
「今日は判断力の訓練だよ。おーい島本くん」
島本と呼ばれた隊士は驚いたように振り向き駆け寄って来た。
「伊之助くんに訓練の方法教えてあげて。皆、後で僕と対決しようね」
「げっ」
島本達は顔を歪めた。伊之助は自信に満ち溢れているが。
「さ、休憩してる子達にもお仕事お仕事〜」
楽しそうに口ずさんで訓練場を出て行くAを、島本は苦笑して見送った。
「伊之助、だっけか。お前こっち来て正解だったぞ」
「はん？どういう事だ？アイツら、今日は怠けてるだけじゃねえのかよ」
「心も体も削られるキツい“お仕事”だよ。ま、飛鳥羽さんとの対決が一番精神やられるけどな」
伊之助が訓練を始めた頃、Aは隊士達を豪華な和室に集めた。
「皆、僕が次にここに来るまでに、この部屋にある物とその配置を出来るだけ正確に把握して。その後、皆にしてもらいたいことがあるんだあ」
煌びやかな内装に呆然としていた隊士達は、理解が遅れた。
「え？俺たち休めるんじゃなかったの？」
「え？鬼との戦いで最初に死にたいの？」
有無を言わせぬAの笑顔に、皆血眼になって部屋の隅々まで頭に叩き込み始めた。その様子を見て、Aは足取り軽く部屋を出た。
ひょっこりと顔を覗かせた先は台所。そこでは二人の少女が米を炊いていた。
「あ、Aさん。今日はどれくらいですか？」
振り返った三つ編みの少女は汗を拭った。
「今日もいっぱい来るよー」
「本当ですか！」
安心したように彼女達は胸を撫で下ろした。
「皆のこと、よろしくね」
Aが微笑むと、二人の少女は笑顔で頷いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 117人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ほんわか若頭 | 作成日時：2021年2月10日 12時
