発現条件 ページ16
場が水を打ったように静まり返った。伊黒は頭を抱える。
「……申し訳ありません。穴があったら入りたいです」
甘露寺は耳まで赤らめ、深く土下座をした。次はAが口を開く。
「痣というのは聞いた事がありますが、あまり考えたことはありませんでした。
でも、あの時の戦闘を思い返してみた時に、思い当たること、いつもと違う事がいくつかありました。無一郎くんの顔にも、そのようなものが浮かんでいたような気もします。
その条件を満たせば恐らく皆痣が浮き出す。今からその方法をお伝えします」
視線が一気にAに集まる。先程のものとは違い、緊張感のある沈黙が広がった。
「前回の戦いで、僕たちは毒を喰らい動けなくなりました。呼吸で血の巡りを抑えて毒が回るのを遅らせようとしましたが、上弦の伍は飛鳥羽家を襲撃した鬼。怒りと憎しみで感情の収拾がつかなくなりました。
そのときの心拍数はおそらく二百以上。体温も高く、三十九度を超えていたと思われます。ねえ、無一郎くん」
「うん、それくらいだったと思います」
胡蝶は目を見開いた。
「そんな状態で動けますか?命にも関わりますよ」
「そうですね。だからそこが篩にかけられるところだと思う。そこで死ぬか死なないかが、恐らく痣が出る者と出ない者の分かれ道です」
時透が言葉を引き継いだ。
「心拍数を二百以上に……。体温の方は何故三十九度なのですか?」
「胡蝶さんの所で治療を受けていた際に計った体温が三十九度でした。痣が出ていたと思われる時と同じ体の熱さだったはずです」
Aの並外れた記憶力に、一同は驚愕した。
「チッ、そんな簡単なことで良いのかよォ」
「これを簡単と言ってしまえる簡単な頭で羨ましい」
不死川の独り言に対する冨岡の発言に、空気が一瞬凍りついた。
「では、痣の出現が柱の急務となりますね」
二人の諍いを無視して発言した胡蝶に、悲鳴嶼は同意した。
「御意。何とか致します故、お館様にはご安心召されますようお伝えくださいませ」
「ありがとうございます。ただ一つ、痣の訓練につきましては、皆様にお伝えしなければならない事があります」
あまねは表情も口調も変えなかったが、どこか申し訳なさそうに言った。
「何でしょうか……?」
甘露寺は首を傾げる。
「もうすでに痣が発現してしまった方は選ぶ事ができません……。痣が発現した方は、どなたも例外なく__」
117人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ほんわか若頭 | 作成日時:2021年2月10日 12時