増えた死人 ページ10
解剖した遺体を遺族に返却するのを任せるべく、中堂と私はフォレスト葬儀社の社員である木林さんと話をしていた。
もちろん、それだけが目的ではない。
八年前の、姉さんを殺した犯人の唯一の手がかりである「赤い金魚」を探すためでもあった。
「今月は出ませんでした。「赤い金魚」。」
「そうか…」
それを聞いて、中堂も私も曇った顔になる。
もう八年だ。八年も探し続けているのに犯人はまだ捕まらない。どうすれば見つかるのか。犯人は今頃何をしているのか。まず、生きているのか。
もし、これでもう死んでましたなんて言われたらたまったもんじゃない。
「引き続き頼む。」
木林さんが車に乗ろうとするところを中堂が引き止め、いつも通り金を渡す。
この光景を姉さんが見たらどう思うだろうか、なんてぼーっと考えていると、木林さんがふと思い出したように話し始めた。
「遺体が集まるといえば、東央医大。このところ、多いみたいですよ。死人が。」
怪しげな笑みを浮かべながらそう告げると、木林さんは車に乗り込み去っていった。
東央医大…そういえば、今回の騒動の原因となった高野島渡も、帰国した3日後にそこで健康診断を受けたという話を聞いた。
死人が多い、ということはMERSの影響なのだろうか。しかし、そんなすぐに死人が増えるものなのか。たしかに高野島渡は健康診断で検診を受け、そこに居合わせた8名の人に感染させたという。
でも、感染した全員が必ずしも死に至るとは限らない。助かった人もいるはずだ。じゃあ、何故…?
「おい、戻るぞ」
「赤い金魚」が見つからなかったせいなのか、少しイライラした様子で中堂が私に呼びかける。
東央医大の話が気になりながらも、ここで考えていても仕方がないと思い、ラボへと戻る事にした。
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灯(プロフ) - りなさん» まさかコメントをいただけるなんて…!ありがとうございます!自分の思い通りにくっついてくれるか心配ですが頑張ってみようと思います! (2018年3月28日 3時) (レス) id: f8c46eabca (このIDを非表示/違反報告)
りな - これからどうくっつくのかとても楽しみです!更新頑張ってくださいね!! (2018年3月28日 2時) (レス) id: 8a0990f49a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灯 | 作成日時:2018年3月25日 0時