裸足のシンデレラ (ページ23)

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～ side テヨン～

俺達NCTのデビューが決まった。
勿論曲も渡されて練習もしてきたけれど、いざ明確に日にちが決まってデビューステージの日程を聞くと一気に現実的に思えて来る。

YT「やっと…やなぁ」

JY「ユータ年寄りみたいだぞ」

TY「でも何か俺もそう思うよ」

順番にデビューしていくらしく、俺は既に最初のユニットに名前が載っていた。だけど意外だったのはAの名前も載っていた事だった。
練習室でその資料を渡された時のAの反応を覚えている。

MK「俺達はもっと前に言われてたけど…」

「なっんで僕まで…？」

MK「そんな不安そうにするなA」

「…僕はユソナだよ」

記載されている自分の名前に震える手で触れるとAは涙の膜を作った目で俺を見上げた。

不安なのがヒシヒシと伝わって来るけれど、その瞳にはデビューの先の希望を夢見る炎が見えた。
男の中に女が1人。それも男のフリをし続けるなんて無理がある気がしてきた。
今までのAのパフォーマンスを見ているとそんな不安は浮かんで来なかったのに、何故か急に未来を見てしまったんだ。

TY「……A」

彼女の名前を呟いてしまった瞬間に代表が部屋に入って来た。
休憩中の俺達は立ち上がって代表に挨拶をすると、代表は人の良さそうな笑みを浮かべた。Aの話を聞くまでは本当に良い人だと思っていたのに、その笑顔が仮面に見えて仕方ない。

代表「A、少し話をして良いかな」

「はい。では場所を変えましょうか」

年下の妹から堅苦しい敬語が聞こえると何だか妹すら怖く感じてしまう。
この子の底が見えないからだ。

代表「いや、ここで十分だよA」

ニッコリと更に笑顔を深くした代表はそっとAの頭に手を置くと驚くべき発言をした。

代表「君には悪いんだが、Aの事を株主が知ってしまってね」

それまでの流れで嫌な予感がした。代表の柔らかく耳にベッタリとくっ付いて来る声が怖い。

代表「Aにはやはり、女としてデビューして貰う」

その言葉に全員が目を見開いたし怒りを感じただろう。
つい先日、彼女を男としてデビューさせると決めておきながら今更になって彼女を女としてデビューさせるって…そんな横暴があるか？

俺達皆が怒りを露わにしそうになった瞬間にAは代表を見上げて言ったんだ。

「分かりました」

まるで言われたままに動く人形のようで、でもそれが美しくて恐ろしい。

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