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〜 side ドヨン 〜
NCTとしてのデビューの説明を聞いたところ、最初から徐々にメンバーを増やして公開していく形らしくて、理解するのに苦労したけど凄いグループを作るんだなって事は痛感した。
シャワー室から出て帰ろうとすると練習室から音が聞こえてきて、そのまま俺の足は勝手に向かって行く。早く帰って休まなきゃいけないのに、何やってんだよ俺…なんて思いながらも聞こえて来る歌声に興味を唆られる。
DY「…ッ」
そっと練習室のドアを開けて覗けば、そこに居たのはAで、普段なら弟達の誰かしらが一緒に残っていたりするのに1人で居るあたり居残りでもしていたんだろうか。
スマホを見れば10時を過ぎていて、そろそろ帰らないといけない時間になってきていた。
DY「…ユソナ」
最近外でこの名前を呼ぶ事にも慣れてきた。何より本人が本名で呼ばれる事を怖がっているらしいしな。
俺が呼べばハッとしてこちらを向くと目を見開く妹が居て、音楽を止めるとスタスタとこちらに向かって来るから俺も練習室の中に入る。
「ドヨニヒョンまだ居たんですか！」
DY「ヤー、居残りしちゃダメだろ。疲れてるんだし帰らないと」
「でも……」
DY「…さっきの歌、凄かったよ」
「え？」
これは素直な感想だ。表現するのは難しいけれど、Aが歌っていた洋楽の歌詞の意味もあまり分からないのに引き込まれていた。いや、引き込まれると言うより引きずり込まれていた。聞こうとしなくても歌っている彼女から目が離せなくて瞬きすら許されない。まるで彼女だけが放ち出す不思議な空間に居るようだった。
DY「あの歌なら大丈夫、お前は凄いよ」
「本当ですか？」
DY「ヒョンの言葉を信じろよ。ほら、荷物まとめて帰るぞ」
「…はい」
俺が褒めた事に嬉しそうに頬を緩める姿は年相応で、最近になってやっとAの反応が人間らしくなって来た事に皆も安堵していた。
まだ泣く事には抵抗があるのか我慢するような表情を見せるけれど、以前と違って笑顔が本物になった。
前の笑顔はまるで…うーん……膜が張っているような。1枚か2枚、何かを貼り付けたようなそんな笑顔だった。
「ヒョン、お待たせしました」
DY「荷物それだけ？」
「必要最低限にしろ、ってマークが」
DY「マークにも世話されてんのかよ」
「皆過保護過ぎます」
ケラケラ笑いながらも夜の道を一緒に歩いて帰れる事が素直に嬉しくて、可愛い妹に歩調を合わせて少し時間をかけて帰宅した。
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作者名：heram | 作成日時：2019年3月19日 9時
