好き 7 ページ7
夏油side
『私ね』
夏服のない私達にとっては地獄の任務中、だけど私にとってはAと2人きりになれる絶好のチャンスの最中、彼女は凄い真剣な顔で話し始めた。
まさか彼氏の話とかするのかい?
それは残酷過ぎると思うよ?
『小学2年の時、夏休みの図工で蝉の抜け殻集めて"セミの抜け殻レストラン"って作った事あるんだ』
「……は?」
『お客さんも店員さんも蝉の抜け殻なの!まぁ1週間展示してたらほとんどがパリパリって崩れてたけど』
……え、…ん????
彼氏の話じゃないことに安心したけど処理しきれない情報量に頭がパンクしそうだよ…。
「君は女の子だよね?」
『傑には何に見えてるのさ』
「見た目は女の子、頭脳は子供」
『何でコ○ン君?』
笑ってるけど私としてはモヤモヤだよ。
昨日硝子と話していたAは嘘を言っているように見えなかった。
つまりお泊まりデートは真実。
だけど問題は相手だ…それにどうにも気にかかる。
そもそも硝子から恋愛の話題をふるなんておかしいし、らしくない。
そんな事を一度頭から退かして任務を終わらせて廃墟から出た時に待ち構えていたのはザーザーと振り続ける大雨。
「すまないA」
『何で雨降ったのに傑が謝るの!?』
「私が天気予報を見て傘を持って来るべきだったからだよ」
『このタイミングで窓の人達が来れないのも?』
まぁ…それも私が手を回しているのだけど、黙っていて良いかな。
要は彼氏が居たとしても別れるように仕向ければ良い話だ。
私を惚れさせた君が悪いんだよ。
そう思いながら雨の中、急遽取れた宿に向かって走る。
術式の力で体温が上がる彼女は毎度制服を脱ぐから、流石に注意しておいて良かった。
だけど今回は別段、制服の下に来ている白い半袖のインナーシャツが彼女の身体を更に際立たせる。
「A」
『ん?疲れた?』
「いや…その…服を着てくれないか」
『……おっふ』
下着がハッキリ見える今の自分の状態を理解したらしい彼女が静かに制服を着直せば、やっと顔を見る事が出来た。
って思ったのに私は忘れていたんだ。
彼女は馬鹿で子供で男の子みたいな性格
だけど
"美人"だということを
体温の所為で火照る顔に濡れた髪
長いまつ毛に乗る雨粒すら綺麗に見えてしまう
水に濡れて白く光る肌すら愛おしく見える
って私の俺は彼女に対して反応するのが早いらしい。
「…旅館に着いたら私の傍から離れないでくれ」
『うっす!』
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作者名:heram | 作成日時:2021年3月4日 23時