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「Aー」

「はぁい!」



廊下から呼ばれて席を立てば、教室の入口に白布がいた。

さっき貸した教科書を返しに来たみたい。



「ありがとう、助かった」

「どういたしまして」



教科書とともに、お礼にとアルファベットチョコを二つ手渡される。

一つ口に含めば、甘いのが口に広がった。



「おいし、ありがと白布」

「いーえ、こちらこそ助かった」



私に手を振り踵を返す白布を見送って、席に戻る。

教科書を机にしまうと、前の席で机に突っ伏していた川西がのっそりと起き上がった。



「川西、チョコ食べる?」

「んぁ?」



寝起きだからなのか間抜けな声を上げた川西に、チョコの包みを示した。

彼は小さく頷いて、私の手からチョコを受け取る。



「サンキュ」

「白布にもらったの」



私が言えば、川西はちょっとだけ顔をしかめた。

なにあいつ女子力かよ、と漏らすその声は少し不機嫌そうである。

ちょっとそんなところも様になってるなぁなんて、柄にもなく乙女チックなことを考えた。



「……なぁ、吾妻」



もごもごとチョコをほおばりながら、川西が言う。



「お前白布と仲良かったっけ?」

「去年同じクラスだった、ってくらいだけど」



川西がチョコを飲み込む。

いかにも男の子、と主張する喉仏が上下するのについ見惚れそうになって、すぐに我に返った。



「――A、」

「え?」



突然呼ばれた私の名前。驚きで変な声しか出ない。

慌てて川西に視線をやると、川西は私の触角を軽く引っ張った。

ちょっとだけ前につんのめり、川西との距離が縮むのに否が応でも胸が高鳴る。



「白布って、吾妻のこと名前で呼ぶんだなあって思って」

「『吾妻』より『A』の方が呼びやすいって言ってた」



ん、これはもしかしなくてもチャンスだろうか。

ドキドキするのをごまかすように、机の下でこっそり両手を握りしめて、私の触角をいじりっぱなしの彼に聞く。



「川西も『A』って呼ぶ?」
「呼ぶ」



若干食い気味だったことに戸惑いつつも、思い切ってよかったと安堵の息を吐いた。

頬がにやけるのが我慢できない。



「A」

「なんか恥ずかしいかも待って、」



存外恥ずかしくて、赤いであろう顔を隠そうとうつむいた。

私の髪をいじるのをやめない川西に、どうにも心臓は鳴りやみそうにない。

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設定タグ:ハイキュー , 川西太一 , 白鳥沢   
作品ジャンル:恋愛
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びす(プロフ) - コンタクト強いですね……(^ω^)メガネェ… (2018年9月18日 23時) (レス) id: cb6d1b30b9 (このIDを非表示/違反報告)
有紗(プロフ) - 私もヒロインちゃんと同じで、宇宙柄が好きなので、共通点があって、少し舞い上がってしまいましたw (2018年2月12日 16時) (レス) id: 75977457a6 (このIDを非表示/違反報告)
文野ゆかり(プロフ) - 前までどうも思っていなかった太一を、この小説を読んで好きになりました!夢主ちゃんが左胸に太一の手を当てたとき、太一が「……D、」と言ったときは吹きましたwwwwというか、2話に一度は笑ってましたwwwww めっちゃキュンキュンしました!!! (2017年5月6日 17時) (レス) id: 5d1d269320 (このIDを非表示/違反報告)
てふ子(プロフ) - うぃらんさん» お返事遅くなってすみません!太一くんかっこいいですよね……ニヤニヤしていただけたみたいで嬉しいです(笑)応援励みになります!続編出したのでよかったらよろしくお願いします!! (2017年3月5日 0時) (レス) id: a584b5f4ae (このIDを非表示/違反報告)
てふ子(プロフ) - ナギさん» お返事遅くなってすみません!告白シーンは私もどうしようかと練りに練ったのでそういっていただけてとても嬉しいです!コメントありがとうございました! (2017年3月5日 0時) (レス) id: a584b5f4ae (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひな x他1人 | 作者ホームページ:https://twitter.com/pp__synd  
作成日時:2016年12月20日 21時

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