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STORY.6 ページ10

..







しかし、幾ら突き返しても、

Aの腰に回った腕がそれを許さなかった。


腰を抱く力は、押し返す力に比例して強くなる。



男は自身の腕の中で至難する彼女を目に、

面白おかしそうに目を細めていた。





『…………』


「サーティーンサン……?」


「おっと、怒んなよ?

俺は、嬢ちゃんの為に抱き寄せてんだからな?」


「何ヲ巫山戯タ事ヲ言ッテイルンデスカ。

早ク、Aサンヲ解放シテ下サイ」


「いやァ、だって、俺チャンが離したらーー」





唐突に、Aから腕を離す男。


その瞬間、支えを失った彼女は体勢を崩していた。



倒れ込む寸前。

男はAを抱き寄せる。





「ほらな。こーなっちまうだろ?」

「…………」





言わんこっちゃない、とニヤつく男に、


Voidollは、何も言えず押し黙る。



そんな何も言えなくなったVoidollと、

一切、抵抗しないAを良い事に、


男は、Aの頬に指の腹を沿わせ、顎を持ち上げた





「にしても、二足歩行の仕方まで忘れるとはなァ」


「マダ、運動機能ガ安定シテイナイダケデス」


「それにしても、だろ?

まるで、身体と中身が一致してないような……」





無警戒な無心の青い瞳に映るは黒。



黒は、その瞳の奥に潜む何かを探そうとするが、

その何かを見つけ出す事は出来ない。



数秒間、お互いの瞳を見据えていた二人だったが、


男は彼女の顎から手を離すと、

白けたように嘲笑った。





「なーんて、な。この先は"禁句"だったっけな?」

『………………』





冗談とも本気とも似付かない声で言い放つ。



陽気な"道化"を演じながら、


腰に回す手をAの二の腕へと移せば、

彼女が倒れないように、そっと身体を離した。





「ま、このまま、抱き着かれているのも役得だが、

……優しい俺チャンが、立ち方を教えてやるよ」





「ほら、お手をどーぞ」と、


黒い手袋をした爪の長い片手を差し出す。



Aは言われるがままに、

その手に、自身の手を乗せた。





そこからは直ぐだった。





「まず、背筋を伸ばせ」

「重心は踵だ」

「膝は正面に向けろ」

「ほら、重心が爪先によってんぞ」





男の的確な指示のもと、

数分後にはすっかり自身の二本の足で立っていた。


ゆっくりだが、既に歩く事すら出来る。





「まぁ、俺に掛かればこんな……」

「Aサン、良ク出来マシタネ!」

「あれェ? 俺チャンは……?」

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ヒュリン(プロフ) - 更新、有難う御座います。(五体投地。) (2020年7月9日 15時) (レス) id: 99d3f778de (このIDを非表示/違反報告)
ヒュリン(プロフ) - 続き…あったらでいいので…お願いします。 (2019年10月24日 7時) (レス) id: 99d3f778de (このIDを非表示/違反報告)
高橋 - 枝豆将軍さん» 亀更新ですが、頑張っていくので、これからも宜しくお願いします:) (2019年2月20日 15時) (レス) id: a28b9ba00e (このIDを非表示/違反報告)
枝豆将軍(プロフ) - 続きが楽しみです!頑張ってください! (2019年2月18日 15時) (レス) id: 93357c7d26 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:高橋 | 作成日時:2019年2月2日 21時

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