【#コンパス】Restart. (ページ14)

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STORY.10 ページ14

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壁を力任せに殴ったマルコスは、

目の前の無知な青い瞳を睨み付けた。

「その声はお前のものじゃ無い。

綺麗な髪も、白い肌も、僕を映す青い瞳も……。

全部……、全部全部全部ッ！」

お前のものじゃ、無い……ッ！

怒りで身体を震わせるマルコス。

Aを逃さないように壁横に付く手にも、

Aの肩を握る手にも力が入る。

しかし、マルコスは、ふと気付いた。

目の前の彼女は、自分を見ているにしても、

その眼には何の表情も現れていないことを。

自分がどれほど、縋っても、感情をぶつけても、

犬か猫でも見る様な、全く無縁な眼つきである事を

『……、誰のもの……？』

「……っ」

『…………、私は、誰の……？』

「っっ……やめてよッ……！」

Aも何も知らないのだから仕方がない。

只々、抱いた疑問を問い掛けただけなのだ。

マルコスも、それは、理解している。

しかし、人形のように代わり映えのしない表情で、

純粋無垢に問い掛けてくる言葉を遮った。

そして、ふらりと力なく立ち上がった。

未だに蹲るAを見下して、眉を顰める。

「嫌い……、大嫌い。本当、虫唾が走るよ……」

『………………』

憎悪に塗れた言葉……、のはずが。

酷く寂しそうに、辛そうに。

泣きそうな表情をしていた。

言葉を吐き捨てたマルコスは、

くるりと背を向けて数歩先を歩く。

しかし、いつまでも蹲るAに気付くと振り返った

「ねぇ、いつまでそうしてるの？

こっちは、早く案内終わらせたいんだけど？」

『…………立て、ない……』

「……は？」

『……手を、貸して……、欲しい』

「…………」

大嫌いと言われたばかりの奴に、

助けを求めるAに深い溜息を吐くマルコス。

周りに自分しかいない為、

自分に助けを求められるのは、仕方がない事だが。

曲がりにも、彼女を傷付けた自分に助けを求める、

余りにも、危機感が無い彼女に、頭を掻き毟った。

「…………ばっかなんじゃないの……」

『……そう…………』

今の言葉を否定だと受け取ったのか。

壁伝いに一人で立ち上がろうとし始めるA。

マルコスは、再び溜息を吐くと、

倒れ掛けるその腕を掴み引っ張り上げた。

「今日だけだから。もう、僕に迷惑かけないで」

ぱっと腕を掴んでいた手を離し、冷たく言い放った