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「......アインズ...様......」
「ん?」
「......私は......その......」
「なんだ?」
多少ましになったのか、
目を合わせるようになった
「パドラ......ヌスを......捨てたいのですが......」
「何故だ?」
「......」
「捨てるのは構わないが、
お前の親の名前でもあるだろう?」
「......違います......!!!
パドラは......
その......」
「はっきり言ってくれ
まどろっこしい」
「......すみません......
その......
ご無礼をお許しください」
「構わん」
「......パドラとは世界を崩壊させた魔女の名前です
底知れぬ...
魔力と叡知を持つとされる災厄の魔女
時詠みの魔女......なんです」
北欧神話の中には確か無かったな...
「別に良いじゃないか」
「え......?」
「別に良い名じゃないか
私たちと共に生活するのだから
良いと思うぞ」
「......!
あ......あり......ありがとう......ございます......!」
...きっとユールはそれで少しだけ心を閉ざしたんだろう
だからこそこうやって褒められると感涙するほど嬉しいのだろうな
「でも本当に嫌なら
パドラ・ヌス=ユールではなく、
パドラ=ヌス・ユールにすれば良いんじゃないか?
ユールはユールで
時を見れないんだからな」
「......っ......」
......なんだか本当に可哀想になってきたな
よっぽど辛い思いをしていたのか......
俺はそっと抱き締めてやる
「っ...っ!!!」
ユールは涙をポロポロと濁流のように流した
俺は涙を拭ってやり、死なない程度に抱き締め続けた
「ひっ...く...」
しゃくりをあげて涙を拭い、鼻声で「ありがとう......ございます」と言った
「その......
村の人以外は......
私を......その......」
「良い
良いのだ」
「...はい......」
なんだろうか
沸々と怒りがこみ上げてくる
出会って数時間__数秒で姿を見破られたが__だと言うのに
我が子のように愛しい守護者達と同じような感覚に陥る
この人間は俺が手を離せば一人で生きていけないだろう
だからこそ...
俺が守ってやらないとな
......ん?
ああ
まだ俺が人間の頃の感情だからか...
まぁ良いや
守ってやろう
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作者名:神無 | 作成日時:2017年1月12日 10時