【ヒロアカ】longinglove ３ (ページ10)

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私は彼にとって中学時代のクラスメートの一人に過ぎない。それだけの関係だ。幼馴染みでも無ければ、友達ですらない。あの現場に偶然居合わせてしまっただけの…赤の他人。

彼の脳が記憶を処理している間に彼の携帯を拝借し、待ち受けになっていた写真や、いつの間にか撮られていた写真に零すまいと堪えていた涙が零れて落ちてしまう。

「有難う…嘘でも想ってくれて。私、君と過ごしたこの一年……とても、幸せだったよ」

写真、連絡先、履歴、私に纏わる全ての痕跡を消し去り、そろそろ処理が終わる頃だろうと涙を拭った私は「緑谷君…」と関係を持つ前の呼び方で声を掛けた。

「あ……っ」
「気分どう…？」
「A……っ」

記憶の処理が終わっても感情がまだ追い付いていないのだろう。大粒の涙を溢れさせながら初めて聞く呼び捨てに「初めてだね、そう呼ぶの」と呟く。

だが、そんな事はどうでも良いと泣き叫ぶ様に「終わりたくなんか無かった…!!」と言う彼は辛そうに自身の胸を強く掴んでいて……そんな彼に「終わったんだよ…」と頭を撫でる事しか出来無かった。

私だって終わらせたく無かったよ。ずっと、この先も君と過ごして居たかったよ。それこそ、永遠に時が止まれと願う程に。

「私が耐えられなかったの。君に情が入り過ぎて…実験だと思えなかった。君を生かす為に始めた事だったのに、気付けば君を中心に私が生きてた……」
「…僕は弱いままだよ」
「君の言う弱さは私にはどうする事も出来無い。個性の制御も戦闘に於いての身の振り方も…専門外だから」
「そうじゃないの……分かってるだろ…」

少し怒った様に言う彼に「分からないよ。私は君の恋人では無いから」と笑い、彼の頬に触れる。

「本当に…終わっちゃうの…？」
「うん」

至近距離で見詰め合うと、もう誤認している訳では無いだろうに唇を重ねて来た彼を私は受け入れた。

これで最後なのだ。そう思うと涙が止まらないが、最後に誤認では無く、彼の本来の意思でキスをしてくれた事が嬉しくて堪らない。

ゆっくりと唇が離れるのと同時に彼の中の私の存在を一つ一つ消していく。