【ヒロアカ】longinglove ３ (ページ7)

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泣いてどうなる訳でも無い。薄々気付いていた事だ。私さえ居なければ、私の存在が父とあの人の幸せを壊したのだと…分かっていたじゃないか。

あの人を母親だと思っていた訳じゃない。擬似家族に絆されていた訳でも無い。あの人の中の私はそもそも虚像以外の何者でも無い。それを今更存在を無かった事にするのに、何を泣く必要がある？

父の事もそうだ。確かに哀れみを込めて優しく接してくれた事はあった。父は私の為では無いにしろ、私が生きられる様に支援してくれると言ってくれた。

見捨てられた訳じゃない。仮に見捨てられても文句は言えない立場だ。父もあの人も…私を生かしてくれた、産み落としてくれたじゃないか。

「……っ…」

分かっているのに、理解しているのに、納得してる筈なのに…彼の声を聞いてしまった今、自分でも気付かない内に張り続けていた虚勢が、意図も容易く崩れ行く。

暖かな家族を無縁の物だと知りながらも、何処かでずっと渇望していたのだろう。愛してほしかった、ちゃんと私の存在を肯定してほしかった。叶わないと知りながらも…擬似家族を貫こうと必死になった私を、私自身が嘲笑う。

私は誰からも愛されない。誰からも必要とされない。そんな私が作り出した世界など、切っ掛けさえあれば簡単に崩れ去ってしまう儚いものだと分かっていたじゃないか。

止まらない涙を拭いもせず、ポタポタと携帯の画面に落ちるそれをぼんやりと眺める。嗚咽を漏らさない様に一方的に切ってしまった携帯を固く握り締めた時、不意に昨日の爆豪君の言葉を思い出す。

『テメェの存在価値ってなんだ』

価値も必要性も意味も無い。ただ、この世に生を受けてしまったが為に、人に不幸を齎す事しか出来無い…癌と同じだ。

「………」

生まれてきてごめんなさい。苦しめてごめんなさい。あなた達の幸せを壊してしまって、ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…

今思えば、幼い頃に呪文の様に唱えていたその言葉はそういう意味だったのでは無いかとｽﾄﾝと胸に落ちてくる。それを理解した時、自然と涙が止まり、代わりに出て来たのは乾いた笑い声だった。

ずっと目を逸らしていただけで、本当はあの頃から分かっていたのだ。自分はそういう存在なのだと。だから、あの人に殺される事を仕方が無いと受け入れた。

ただ…あの人の記憶を改ざんしたのは、あの人が哀れだったからだ。