【ヒロアカ】longinglove ３ (ページ44)

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黙り込んだままぼんやりと彼を見詰めていると彼は「無音A…さん、だよね…？」と確認する様に聞いてくるので肯定する様に頷くと彼は何処か安心した様に微笑む。

「緑谷、外出てるぞ」
「私達も出てるね」
「有難う、皆」

何に気を遣う必要があったのか、そう部屋から出て行く三人を目で追っていると、緑谷と呼ばれた彼は「気分はどう…？何処か痛いとかは無い…？」と聞いて来る。

先程、梅雨ちゃんが言っていた私を運んでくれた“緑谷”という人がこの人だったのかと気付くと同時に、彼がその“緑谷”である事を違うと思ってしまったのかが不思議で堪らない。

彼を“緑谷”とは違う、別の人を認識してしまっていた様な……なら、その別の人とは誰なのか、疑問は深まっていくばかり。

「…頭が少し、ボーッとする」
「お水貰って来ようか…？」
「ううん、大丈夫…」

泣き過ぎて思考力が低下しているだけなのかも知れない。色々不可解な事ばかりで処理が追い付かない。……私は一体、どうしてしまったのだろう。

「初めましてじゃ…ないよね…？僕達」
「…初めましてだと思うけど…」
「……じゃあ、僕が一方的に君を知ってただけなのかな…」
「分からない…」

緑谷君と言葉を通わせる度に何も考えられなくなる。

「僕……に、……かった…だ」

上手く…聞き取れない。

「どう…てか……ない…ど、君に…く、……かった…」
「待って…頭が、変なの…」

緑谷君の言葉に耳を傾けたいのに、何かに阻害される様に、脳が情報を取り込む事を放棄するかの様に…緑谷君の言葉が上手く聞き取れないのだ。

「君の声が、上手く…拾えない」

そう言葉を紡ぐと、何故か緑谷君は酷く傷付いた様な顔をしていて……その表情に、胸が痛む。