【ヒロアカ】longinglove ３ (ページ41)

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恐怖でカタカタと震える私に目を細めて笑った男は「責任取ってやろうか？」とそんな気など無い癖に言うので、滅多に抱く事の無かった憤りを感じてしまう。

「離して…アナタに、関わりたくない…」
「そう寂しい事言うなよ。血の繋がった親子だろ？」
「アナタを父親だと思った事何か一度も無い…私の父親は…」
「お前を家から追い出した挙句、自分の幸せの為に実の母親の記憶から娘の存在を消させたあの男ってかァ？」

馬鹿にする様に嘲笑う男に何も言えなくなってしまう。違う、そうでは無い。そうでは無いのだ。記憶を消したのも、父の願いを叶えたのも私の意思だ。私が甘んじて受けたあの人達を苦しめた罪に対する罰だ。

「オトーサンが感動の再会を記念してお前を苦しめる記憶を忘れさせてやるよ。じわじわと思い出す度に忘れられる様にな」

そう私の頭に手を置いた男に「嫌っ！！」と叫んだが……気付けば、目の前に居た筈の男の姿は無くなっていて、嫌でも個性を掛けられたのだと察してしまう。

「…あ…ああ…っ」

一体何の記憶が消されたのかと確認しようと彼を思い出した時、確かに彼の顔や過ごした日々を思い出せるのに、何故か交わした筈の言葉がどういったものであったのかが思い出せなくなっていたのだ。

「っ…いや、嫌だ…っ」

忘れたくない。覚えていたい。幸せだったあの日々を無かった事になんてしたくない。

思えば思う程、私の中から彼の存在が少しずつ消えていくのを感じ、彼の事では無く、あの人の事を思い浮かべると、同じ様に過ごした日々は確かに残っているのに言葉だけが思い出せなくなっていた。

「いやぁぁぁああ───っ!!!」

周りも目も気にせず、その場に座り込んで泣き叫んだ。思い出す度に消えていく記憶がいつか完全に無くなってしまう恐怖を吐き出す様に。

怖い、嫌だ、忘れたくない。嫌だ…嫌だ…っ！！

自身の肩を抱いた時───

「っ、A…！」

掛けて来る誰かの姿が見え、そこで私は意識を手放してしまったのだった。