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ただ、泣き続ける私を爆豪君は静かに眺めていた。鬱陶しがるでも無く、哀れむでも無く、何を考えているのか分からないその赤い瞳で、ただただ泣き止むのを待ってくれている様に、何も言わずにそこに居てくれた。
どれくらいそうして居たのかは分からないが、落ち着く頃にはびっしょりと汗を掻いていたコップの中身が氷から水へと変わり、乾いたのか、それとも水滴が伝い落ちて無くなったのか…冷たくも無いそれが時間の流れを感じさせる。
「充分かよ」
「今は…ね」
「また思い出して泣くんか」
「分からない。泣かないとは言えない」
「めんどくせぇ…」
そう言いつつ泣き止むまで付き合ってくれた爆豪君は意外と面倒見が良いのでは…？と思ってしまう。それを伝えれば「キメェ…」と言われかねないので口にする事は無かったけれど。
「…引っ越すんだろ」
「うん。近々家探す予定」
「そん時は呼べ」
「え…？」
「事故物件にされたら不動産屋が迷惑だろうが」
と伝票を持って席を立った爆豪君に慌ててお金を渡そうとしたが受け取ってもらえず、何故か家まで送られてしまう。
「…私の事、警戒していたんじゃないの…？」
「あ…？」
帰ろうとする爆豪君の背中に問い掛ければ、爆豪君の面倒くさそうに振り向き「今でも警戒しとるわ」と眉間に皺を寄せ吐き捨てる。
「だが、今の腑抜けたテメェに警戒する価値もねぇんだよ。それに、今弱みを握ってんのは俺だ」
「…弱み…か」
爆豪君がどうしてそこまで警戒するのかは分からないが、過去に爆豪君の記憶でも覗いた事があっただろうか。覗いていない…とは、断言出来無いのかも知れないが記憶に無い。
「…私、君の記憶を覗いた事あった…？」
「知るかよ、んな事。大体、テメェ…しょっちゅうクラスの奴等の記憶覗いてたんじゃねぇのかよ」
「そんな面倒事、した事無いけど…」
「はあ！？しょっちゅうガン見しとっただろうが！！」
「ただ観察してただけ。…もしかして、勘違いさせてた…？」
そう言うと爆豪君は「紛らわしい事してんじゃねぇよ！！」とさっさと行ってしまったのだった。
中学時代、クラスメートにどう思われていたのかなんて、微塵も興味など無かったけれど、そう考えればクラスメートや爆豪君が警戒していた事に辻褄が合う。
「そう…思われてたんだ、私…」
初めて知る事実に何だか少しだけ、可笑しくて笑ってしまうのだった。
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作者名：パル | 作成日時：2019年3月31日 10時
