【ヒロアカ】longinglove ３ (ページ14)

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「…違って当然。彼は捏造した記憶のせいで誤認していただけなんだから」
「そうじゃねぇ。この際、デクの感情はどうでも良い。テメェがそこまで執着したもんが本当に恋愛感情だったのかって話だ」
「どういう事…？」

今まで考えもしなかった見解に思考能力が落ちているとは言え、全く理解する事が出来無かった。そもそも恋愛感情が何かと言われても、私は彼に感じていたものがそうなのだと答える事は出来ても、それを第三者に上手く説明する事は出来無いだろう。

彼に恋をしていた。それは紛れも無い事実だと思っている。だが、爆豪君はそれは恋愛感情では無いのではないかと言うので、困惑してしまう。

「雛鳥の刷り込み」

告げられた言葉に目を見開かせると「有り得ねぇ話でもねぇだろ」と話を続ける爆豪君から目が逸らせなかった。

「特別でも何でもねぇ…ただ、初めて人に優しくされたテメェは名ばかりの関係を都合の良い様に誤認してたんじゃねぇのかよ」
「そんな事…」
「ねぇって言い切れんのか？」

爆豪君の言葉を否定したいのに否定出来無い自分が居る。初めて優しく接してくれた相手だから？温もりをくれたから？愛情を注いでくれたから？だから、私は偽りの関係の中で彼に縋っていた…？

震え出す唇を噛み締めれば、爆豪君はそんな私を見て「けっ…否定出来ねぇんじゃねぇか」と嘲笑う。

頭が痛い…何も考えたくない、本当の事など知りたくもないと耳を塞いだ。それでも耳に入って来た「否定出来ねぇんならさっさと忘れろ」と言う爆豪君の言葉を首を振って拒絶する。

爆豪君の言う通り忘れてしまえば、こんなにも彼を想って苦しむ事も、彼に抱いていたものについて考える事も無くなる。彼と出会う前の、人を人では無くサンプルとしか認識出来無かったあの頃の私に戻る事が出来るのだろう。

だけど、それが出来無いのは…単に知ってしまった愛情や温もり、幸福と捉えていたあの時間を無かった事にしたくない私の我儘だ。

何年も押し殺し、ちょっとやそっとでは泣けなくなっていた筈なのに、此処最近はずっと涙腺が緩み切っていて泣いてばかりだ。俯いたまま嗚咽を漏らさない様にと膝の上で固く拳を握り締める。

分かってる。これは自業自得だ。彼を好きになってしまった私が勝手に傷付いて、勝手に終わらせた事を後悔して、勝手に泣いているだけの…滑稽以外の何物でも無いものだ。

忘れたくない…沢山、沢山大切なものを与えて貰ったのだ。忘れられる筈など、無い。