【２４１】 ページ9
何もかも不完全燃焼のままカイ君は此処に居る。自分達の手でこの街に巣食う問題を解決したかった筈で、その為の手段として敵(ヴィラン)を殺めて、それが正しいと信じてやって来た事の結末を、後から来たヒーローが全てを攫って行った。当然、納得なんて出来無いのかも知れない。
「Aちゃんにこんな事言ったって仕方無いって分かってる。分かってるけど、何でもっと早く来てくれなかったんだって……血で汚れたこの手で、人を殺した俺がこの先どう生きれば良いんだ！」
胸が痛くなる程にカイ君のそれは悲痛な叫びだった。堪え切れずに流す涙が場違いにも私には綺麗に見えて、ただただ「なんで……っ」と、悔しそうに呟くカイ君の頭に手を伸ばし、撫でる事しか出来無かった。
「何もかも遅いんだよ……！こんなにあっさりどうにか出来たなら、何でもっと早く解決してくれなかったんだ！オールマイトも来てるんだろ！？あの人だって、現役の頃にでも来てくれたら……っ！」
少し離れた場所に身を隠すお父さんや皆、それからヒーロー達は今、どんな気持ちでカイ君の言葉を聞いているのだろうか。同行しているオールマイトにも、カイ君の言葉は突き刺さっている筈で、それが悲しいけれど、私はヒーローだけの責任では無いと、それでも思ってしまう。
元を正せば、薬をばら撒いた敵(ヴィラン)が悪い。それを取り締まる筈のヒーローや警察が薬に溺れてしまった事も悪い。近隣のヒーローも助けを求められていながら、直ぐに信じて駆け付けなかった事も悪い。カイ君達が人を殺めてしまう前に、周囲の大人がそれを止めなかった事も悪い。この街の現状に気付けなかったヒーローも悪い。こうして考えると、一重に何が悪いなんて決め付ける事なんて出来無い程に、今に至るまでの対応の全てが遅過ぎたのだと、私にも分かる。
仕方が無かったなんて、きっとただの言い訳の様にしか当事者や被害者には聞こえないのかも知れない。それでも、人が人である限り、完璧にはなれないのだと、そんな人間は居ないのだと、その全てを悪だと決め付けたくはなかった。
「ねぇ、何とか言ってよ……！」
「……私は、この街の人間じゃないから、他人事みたいな言葉しか言えないよ」
「っ……それでも、良いから……何か言ってよ」
縋り付く様に私にくっ付いて涙を流すカイ君は見た目通りの年齢に思えて、頭では十九歳だと分かっていても、この小さな男の子に思いの丈を全て吐き出させてあげたいと、そう思った。
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パル(プロフ) - ぽむさん» ｺﾒﾝﾄ有難う御座います!!そう言って頂けると完結まで書き切って良かったと物凄くホッとしました。イケメンにはイケメンな事をさせたいという願望の塊で、楽しんで頂けて良かったです！最後まで読んで下さり有難う御座いました！ (2022年8月10日 10時) (
レス) id: 6636808e83 (このIDを非表示/違反報告)
ぽむ(プロフ) - え、めっちゃよかったです！！！無理やりな完結とか思えなかった！！！！めっちゃ好きな作品です！！！しょうとくんの行動にめっちゃ一緒にドキドキさせられました！！！！最高 (2022年8月10日 2時) (レス) @page38 id: 10c6d472ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：パル | 作成日時：2022年6月7日 0時
