【２５０】 ページ18
ファーストキスというものは、途轍も無く心臓に優しくないのだという事を思い知る。続け様に何度も触れられていた為、ファーストキスどころでは無いとは思うけれど、それでも想像の何倍以上も恥ずかしい。焦凍君にはそういう羞恥心的なものは無いのだろうかと疑ってしまう。
いや、もしかしたら慣れているのかも知れない。有り得無い話では無いだろう。焦凍君の様な顔が整い過ぎている人がキスの一つや二つ既に済ませていたとしても可笑しくは無い訳で……そう思うと何だかﾓﾔｯと、不快感の様なものがほんのりと込み上げてくる。
よくよく考えてみれば、これまでの焦凍君の愛情表現はどれも私にとっては刺激的なものが多く、指先にキスして来たり、瞼にキスして来たり、果てはｻﾗﾘとキスして来たり……キスとはそんな簡単に行える様な行為だっただろうか。否、断じてそんな事は無いだろう。これは焦凍君がそれに至るまでの経験を何処かの誰かで積んでいる可能性がある訳で、思わず焦凍君に疑いの眼差しを向けてしまう。
「何か言いてぇ事があるなら言って良いんだぞ」
「焦凍君、初めてじゃないよね……？その、キスとか……」
「……は？」
何言ってんだ？とでも言いたげな視線を向けて来る焦凍君に「えっと、慣れてるみたいだったから……」と、思わず視線を逸らしながら言うと、焦凍君は徐に私の手首を掴み、それを何故か自分の心臓へと触れさせてくる。
「……あ」
シャツ越しにでも分かる程に焦凍君の鼓動が忙しなく動いている。ﾄｸﾄｸなんて可愛らしいものでは無く、私の鼓動とリンクしているかの様に焦凍君の鼓動も早かったのだ。
こんな涼しい顔をする癖に心臓ﾊﾞｸﾊﾞｸの焦凍君に呆気に取られてしまい、瞬きを繰り返しながら焦凍君の顔を見れば、焦凍君は「……これでも、慣れてると思うか？」と、問い掛けてくるので私は自然と首を横に振っていた。
「全部、お前が初めてだ。触れてぇと思うのも、大事にしてやりてぇと思うのも……全部、お前初めてで、この先もお前だけで良いと思ってる」
そのままｺﾂﾝと軽く額に同じものを当てて来た焦凍君は「なぁ……触れて良いか？」と、今更過ぎるそれを伺いを立てて来るので、反射的にとでも言えば良いのか、私の中の防衛本能が心臓への負担を最優先に動いてしまったのか「だ、だめ……です」と、そう口走っていたのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 206人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
パル(プロフ) - ぽむさん» ｺﾒﾝﾄ有難う御座います!!そう言って頂けると完結まで書き切って良かったと物凄くホッとしました。イケメンにはイケメンな事をさせたいという願望の塊で、楽しんで頂けて良かったです！最後まで読んで下さり有難う御座いました！ (2022年8月10日 10時) (
レス) id: 6636808e83 (このIDを非表示/違反報告)
ぽむ(プロフ) - え、めっちゃよかったです！！！無理やりな完結とか思えなかった！！！！めっちゃ好きな作品です！！！しょうとくんの行動にめっちゃ一緒にドキドキさせられました！！！！最高 (2022年8月10日 2時) (レス) @page38 id: 10c6d472ea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：パル | 作成日時：2022年6月7日 0時
