【１９２】side無し ページ6
―――四班に分かれて夜の街をパトロールに出ていた葉隠、爆豪、緑谷、峰田、八百万の班は夕食時に彼女が伝えてくれた情報を一つ一つ整理しながら陽炎について話していた。気の小さい彼女が偶然とは言え、有益な情報を齎してくれた事が幸いだったと話す中、A組のグループトークに轟からメッセージが送られて来たのである。
内容は彼女が轟に伝えていた件であり、それに続いて彼女から『さっき伝えそびれてた事があって、危ない場所だから近付かない様にって言われてた場所、です』と、この街の全体図が掲載されているパンフレットに赤い丸で印を付けた画像が送られて来たのだ。
「Aちゃん、本当はこんな事しなくて良いのに」
「多分だけど、落ち着かないんじゃないかな。僕達がパトロールに出てる間も、清水さんは一人で旅館に居る訳だし」
気にし過ぎな性質を持つ彼女が現状に対して何も思わない筈は無いと、生徒達は必死に自分達に情報を伝え様としていた彼女を見て察していた。彼女はヒーロー科に在籍しているものの、ヒーロー志望という訳では無い。その為、夏休みが無くなり、保護者である相澤の都合で今回の遠征に同伴する事になった訳だが、こうも根深い案件だった事に生徒達はやるせなさを感じていたのである。
「ですが、今はAさんの情報が頼りですわ。皆さん、この印の場所に敵(ヴィラン)が潜伏している可能性もあります。このまま闇雲に街を回っていても時間を無為に過ごすだけかと」
「だね。丁度方角的に他の班も印に近い場所を回ってるみたいだし、私達は南の印に行こっか！」
そう現在地から近い印の場所を目指す面々は辺りを見渡しながら進む。そんな中「昼間から気になってたんだけど……」と、話し出した緑谷。
「ヒーローがパトロールをしている姿を見掛けてない気がするんだ。相澤先生が昼間に事務所に顔を出していたみたいだけど、この街を警備してるヒーローの数ってそんなに少ない訳じゃないと思うんだ」
観光地でもあるこの街にヒーローが少ない筈も無く、加えて港町である事からそれなりに数は居て然るべきものだと、そう話す緑谷に他の面々も「確かに、オイラもヒーローは見てねぇな」と、口にする。
「けっ、マジで仕事放棄しとんのかよ。此処のヒーローは」
「偶然見掛けないにしても、クッキーを配る女の子の話は知ってても可笑しくは無いと思うんだ」
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作者名：パル | 作成日時：2022年4月2日 23時
