【ヒロアカ】20と1の一等星５ (ページ40)

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【２２６】ページ40

そんな事、出来る訳が無い。だけど、私がカイ君を選ばなければ、カイ君は人を殺してしまう。この街に巣食う中毒者はお父さん達のお陰で捕まり、カイ君が中毒者を喰らわなくても良くなった筈だ。けれど、それでもカイ君は人を殺すと、歳相応の姿を手に入れる為に人を喰らうと、私がカイ君を選ばない限り終わらないと、そういう事なのだろう。

「っ……っっ」

翼が小さくなっていく。私の弱さを映す鏡の様に背中の翼は消え去り、スプリンクラーの水が容赦無く身に降り注いで来る。

「はぁ……ほら、別の部屋用意してやるから、泣きやめよ。カイも呼ぶし、俺が泣かしたってブチ切れられんだろ？」

そうキオさんが私に近付いて来ようとした時だった。ﾄﾞﾝｯと部屋の入口の扉が吹き飛ぶと同時に私とキオさんの間を勢い良く見慣れた炎が走り抜ける。咄嗟に飛び引いたキオさんが「ほんっと、次から次へと厄介事を招くよなぁ、アンタ」と、部屋の入口へと目を向け、それに釣られる様に振り向いた時、そこには会いたくて助けを求めたくて仕方が無かった人が息を切らせながら立っていたのだ。

「わりぃ、A。来るのが遅くなっちまった」
「っ、焦凍君……！」

瞬時に氷でキオさんを牽制しながら駆け寄って来てくれた焦凍君はそのまま私の手を取ると「走るぞっ」と、部屋の外へと私を連れ出した。ﾄﾞｦｫｫﾝ!!とキオさんの大砲の音を背に引かれるままに焦凍君に着いて行く。

「A、お前の個性借りて良いか？」
「え……？」
「応戦するにしても此処じゃ場が悪過ぎる。逃げるにしても一階に着く前に追い付かれちまう」
「え、えっと、熱噴射でキオさんをどうにかすれば良いの……？」

そう言うと、何故か焦凍君は吹き出し「お前、少し見ねぇ間に過激になったな」と、笑っていて、先程まで携帯を取り戻す事に躍起になっていたせいだと、慌てて訂正するけれど、焦凍君は「やっても良いんだぞ」と、扉が開きっぱなしになっていた部屋へと勝手に入って行く。

「か、からかわないで……！」
「わりぃ、浮かれてんのかもな。お前に会えたから」

安堵する様に、そして言葉通り嬉々を匂わせる様に焦凍君は言葉を紡いだ。胸の奥がｷｭｰｯと僅かに痛みを訴え、それは私も同じなのかも知れないと、部屋の鍵を掛け、扉を氷漬けにする焦凍君の背を見詰める。