【ヒロアカ】20と1の一等星５ (ページ27)

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【２１３】緑谷said ページ27

「っ！？」
「そこの君、俺の大事な仲間を殺す気だった訳？」

一体何が起こったのか。そう状況を把握する間も無く掛かった声にその場の全員が視線を向けた時、いつの間に倉庫内に入って来ていたのか、積まれたコンテナの上には酷くつまらなそうな顔をする一人の少年が居て、その傍らには禍々しい顔のある黒い物体が浮いていたのだ。

「カイ、お前……あの子放置して良いのかよ」
「大丈夫。多分、あの子は逃げないよ。俺からこれを取り返すまではね」

そうカイと呼ばれた少年がポケットから取り出した携帯は見覚えのあるものだった。見覚えのあるなんてものじゃない。あれは、確かに彼女が普段使っている携帯で、相澤先生に買ってもらったその日に全員と連絡先を交換していた時に見たものだ。

「ところでさ、さっき君が言ってたAちゃんの孤独って何？あの子、そういうのとは無縁の子に見えたけど……何かある訳？」
「Aを返せ」
「へぇ……君、あの子に片想い中なんだ。俺と一緒だね！俺もAちゃんが大好きなんだ。もう……帰したくない程にさ」

見た目は明らかに小学生の子供のそれと変わらなかったけれど、カイの纏う雰囲気が決して子供のそれでは無く、何処か威圧的で、陽炎のリーダーである威厳の様なものが確かにあった。

「何ボサっとしてる訳？早く撤収するよ」
「ハイハイ。でも、逃がしてくれる気ゼロだぜ？そこの卵共」
「それなら大丈夫。全部、俺の養分にするから」

そうカイが言うと同時にカイの個性らしき黒い物体がみるみる内に大きく膨らんでいき、まるでこの場の全てを丸呑みにする勢いで、そのとんでもなく大きな口を開いたのだ。

「全員退避っ！！」

黒鞭で皆を倉庫の外まで引っ張り出し、振り返った時には既に倉庫の大半が消え失せていて、陽炎の姿は誰一人として見当たらず、自然と逃げたのだろうと察する中、轟君は静かに拳を握り締めたまま倉庫を睨み付けていた。

「轟君、今日はもう……」
「分かってる。ただ……先に行ってくれ。直ぐ追い付く」

掛ける言葉も見付からず、僕達は轟君を一人その場に残して撤収したのだった。