【ヒロアカ】20と1の一等星５ (ページ11)

今日:14 hit、昨日:24 hit、合計:17,325 hit

【１９７】ページ11

＊＊＊

翌朝、待ち合わせ場所である海岸へと向かうと、既にそこにはカイ君が居た。静かに水平線の向こうを見詰めるその表情はとても小学生のする顔では無く、何処か憂いを帯びていて、その小さな身体に色んなものを抱え込んでいるのだろうと、悲しくなる。

浜辺に足を踏み入れると、足音に気付いて振り向いたカイ君は「Aお姉ちゃん！おはよー！！」と、先程までの憂い顔は何だったのかと、言いたくなる程にとびっきりの笑顔で飛び付いてくる。

「わっ……！おはよう、カイ君。朝から元気だね」
「だって、ボクすっごく楽しみしてたんだ！」

腰にくっ付いて来るカイ君の頭を撫でると、カイ君は嬉しそうに目をｷｭｯと瞑りながら笑い「もっと撫でてー！」と、ベッタリと更にくっ付いて来るので「良し！おりゃおりゃー！」と、撫で繰り回す。

「わぁー！あははっ！ねぇねぇ！Aお姉ちゃんは兄弟とか居るの？」
「居ないよ？一人っ子だよ」
「じゃあボクと一緒だ！Aお姉ちゃんが本当のお姉ちゃんだったら良かったのになぁ」

そう頬を膨らませて椋れ出すカイ君に「私もカイ君みたいな弟がほしかったなぁ」と、紛れも無い本心を口にすると、カイ君は「ホント！？」と、嬉しそうにはにかむ。

「うん。可愛くて元気で、しっかりしてて、私の可愛い弟だよって、友達とかに自慢してたと思う」
「うー！なんで、ボクAお姉ちゃんの弟に生まれて来なかったんだろ……本当の姉弟だったら、ずっと一緒に居られたのに」

どうしてだろうね。なんて、考えても仕方が無い事に二人で頭を悩ませながら浜辺を歩くと、足元に桃色の貝を見付け「あっ！」と、思わずそれを手に取った。

「んー？どうしたの？」
「これ、もしかして桜貝？」
「そうだよ？貝殻好きなの？」
「えっと、好きかどうかと言うより、見慣れないものだから、つい……でも、本物って本当に綺麗」
「そんなのその辺にいっぱい落ちてるよ？」

そう言われ、改めて足下を見るとﾁﾗﾎﾗと桃色の貝殻が砂に埋もれていたり、欠けていたり、兎に角カイ君の言う通り、沢山この浜辺に落ちていたのだ。

「カイ君、これって持ち帰っても良いのかな……？」
「え？こんなのが欲しいの？」
「う、うん……だって、綺麗で可愛いし、何か作れたら良いなって思って……」

そう言うとカイ君は足下にある桜貝を一つ拾うと、それを陽の光に翳す様に手に持ち「ホントだ……今まで気にした事も無かったよ」と、静かな声で呟く。