【ヒロアカ】20と1の一等星５ (ページ22)

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【２０８】ページ22

形あるものから無いものまで、全てを喰らうグラトニーという個性。カイ君が陽炎のリーダーであるのなら、敵(ヴィラン)を駆除と称して殺害しているのもまたカイ君だという事になってしまう。

「殺したの……？その個性で」

聞いてはいけない事だとは分かっていた。けれど、気付かないフリも見て見ぬフリも出来る訳が無いと、確認する様に問い掛ける。すると、カイ君は平然と笑みを浮かべたまま「殺したよ、グラトニーに全部食べてもらったから死体も残ってないよ」と、まるで誇らしそうに言うので、逃げる様にソファーから立ち上がろうとした時……

「ダメだよ、Aちゃん」
「っ……！」

軽く肩を突き飛ばされ、ソファーの背凭れに背中を打ち付けたかと思えば、仄暗い瞳で私を見詰めるカイ君の顔が直ぐ近くにあり、逃がさないとでも言う様に私の膝に座り込んで居たのだ。

「大丈夫だよ、Aちゃんは殺したりしないから。俺の傍で笑っててよ。在り来りな何処にでもある景色を見て、綺麗だって……俺の傍でずっと笑ってて」

纏わり付く様に首に腕を回され、抱き締められる。そこには焦凍君に感じた羞恥心も安心も無く、ただただ恐怖しか感じ取る事が出来ず、それでも悲しさは確かにあって、自然と涙が零れ落ちていた。

悲しいのだ。人を手に掛けてしまったカイ君の存在が、そうこの子にさせてしまった社会が、何もかもが可笑しいこの狂った街が、ずっと悲しくて心が痛い。

「……笑え、ないよ」
「ねぇ、Aちゃん。さっき言ったよね、俺の個性は全部食べるって。そこには感情や記憶、そういう目には見えないものも含まれてる」

言葉とは裏腹に優しく私の頭を撫でるカイ君は「食べてあげようか……？」と、耳元で囁く。

「Aちゃんが俺の傍を望んでくれる様に、汚いもの全部食べ尽くして……あんなヒーローの卵達の事なんか忘れさせてあげるよ」
「やめて……！」

私の為などでは無く、カイ君が自分の為に私を此処へ連れて来たのだと、漸く理解する。私がヒーローである皆の傍に居る事を良しとせず、こうして連れ去ったのもそういう事なのだろう。