【１９９】 ページ13
明らかに自分よりも年上そうに見える人にそう呼ばれると変な感じがしてしまうけれど、私をそう呼ぶのはカイ君以外にいない為、自然とカイ君の知り合いなのだろうと、取り敢えず肯定する様に頷いた。
「カイ君のお知り合い、ですか……？」
「まぁ、そんなとこ。カイがアンタを連れて来るって言うから待ってたけど、何してんの？」
青年の言葉にカイ君は何処に私を連れて行こうとしていたのだろうかと疑問に思っていると、袋を持って戻って来たカイ君はその青年に気付くと、途端に眉を顰め出す。
「何で来たの？俺が行くまで来るなって言ったじゃん」
凄味を利かせながら青年を睨み付けるカイ君は先程まで私と桜貝を集めていたカイ君とは全くの別人の様で、何が何だか分からないまま二人のやり取りを見ている事しか出来無かった。
「遅いから迎えに来たんだろ」
「車はある訳？」
「勿論。で、そこのAお姉ちゃんにはちゃんと説明してんのか？」
ふぅ……と、白い煙を吐き出した青年に視線を向けられ、思わず身体を強張らせると、カイ君は私の手に同じものを重ねながら「Aお姉ちゃん、ごめんね。ボクと来てほしい所があるんだ」と、顔を覗き込んで来る。
困った様な、それでいて何処か寂しそうな瞳をするカイ君。そこには決して悪意と呼ばれるものは感じ取る事は無かったけれど、本能的に行ってはいけない様なそんな不安が渦を巻いていた。
「Aお姉ちゃん、ボクが怖い……？」
「怖くないよ……？でも、何処に行くの……？」
カイ君は拾い集めた桜貝を袋に入れ「Aお姉ちゃんにボク達の事を知ってほしくてさ」と、徐ろに私の頭へと手を伸ばして来る。何をするつもりなのだろうかと、見詰めていた時、カイ君は何処か切なげに眉を顰めながら「ごめんね、Aお姉ちゃん」と、私の帽子を奪う。
「あ……カイ君、お願いだから返して……？それが無いと本当に困るの」
「どうなっちゃうの？」
燦々と照り付ける太陽の熱が一気に身体に流れ込んで来る様に、久しく感じていなかった睡魔が徐々に押し寄せて来る。
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作者名：パル | 作成日時：2022年4月2日 23時
