【１０３】緑谷side ページ9
―――そして、その翌朝。一階フロアに八百万さんと葉隠さんと談笑しながらやって来た彼女に……いや、彼女の髪に華やかに飾り付けられた装飾に、昨夜プレゼント作戦を考えていた僕達が動揺のあまり固まってしまった事は言うまでも無いだろう。先程から轟君が僕や瀬呂君に助けを求める様な視線を向けているけれど、その顔の悲壮感と言ったら本当に可哀想になるレベルだ。
彼女の黒髪に映える小さな花が散りばめられた銀の髪飾りには、小粒の色取り取りの石が埋め込まれている。その見るからに高そうなそれが誰からの贈り物であるかなど、彼女の隣で満足気に彼女の髪に触れている八百万さんを見れば一目瞭然だった。
「本当に良くお似合いですわ。持て余していましたのでAさんが貰って下さって本当に助かりました」
「で、でも……こんな高そうなの、貰えないよ」
「値段など関係ありませんわ。保管するだけの私が所持していても、その髪飾りの価値を貶めるだけですもの。ご迷惑で無ければ、そのまま使って下さい」
そう彼女の髪を梳く八百万さんに僕は思わず、八百万さんが男で無くて良かったと心底思ってしまう。仮に八百万さんが男だったなら、轟君と張り合えるどころか、もっとスマートに彼女を口説き落としていたのでは無いだろうか。彼女に妹などという誤解を与える事無く、こう……淑女と言うか、レディとしての扱いを自然とやって退けてしまうのだろう。
「良かったな、八百万が男じゃなくて」
これまた始める前に完全敗北を味わう事になってしまった轟君の肩に手を乗せた瀬呂君は、八百万さんと葉隠さんに挟まれて食堂スペースへと移動する彼女に苦笑いを浮かべながら告げた。
「べ、別の方法を考えよう……？僕達も協力するから！」
「……あ、ああ。頼む」
その後、彼女が居ない時を見計らって八百万さんと葉隠さんに協力を要請すると、二人は二つ返事で了承してくれて、いつの間にか子羊を守ろうの会は轟君の恋を応援しようの会にすげ代わっていたのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 110人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
パル(プロフ) - 529zinbeizameさん» ｺﾒﾝﾄ有難う御座います！楽しんで頂けて本当に嬉しく思います！ご期待に添えられる様に頑張りたいと思います！今後ともこの作品をよろしくお願い致します！ (2022年1月23日 21時) (
レス) id: a050d7518b (このIDを非表示/違反報告)
529zinbeizame(プロフ) - めっちゃ面白くていっきみしてしまいました！！最高に面白いので更新よろしくお願いします！応援しています٩( 'ω' )و (2022年1月23日 13時) (レス) id: c26de05c7b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：パル | 作成日時：2022年1月13日 20時
