【１２３】轟side ページ29
―――初めて心底守ってやりたいと思った相手だった。子供みたいに無邪気に笑って泣いて、恥ずかしそうに顔を赤くしたり、ちょっとした事で拗ねる彼奴の姿を誰よりも近くで見ていたいと。この荒んだ世界を素敵だと、捨てたもんじゃないと、そう言った彼奴の白さを誰にも汚されない様に、他の誰でも無い俺自身が守り続けていたいと、思っていた。
俺の名を呼ぶ声が心地好くて、安心し切った緩い顔が堪らなく愛おしい。彼奴の全てがいつの間にか俺にそう思わせる様になっていた。傍らで眺め続け、そして自覚して、これがそうなのかと腑に落ちる。
彼奴が俺をそんな風に見ていない事は分かっていた。眺めるだけで酷く満たされていた。だから、それ以上は望まないつもりだったが、彼奴は過去のトラウマからそういった感情を向けられる事が不快だという。
眺めるだけで良いと思っていた筈だったそれが、途端に終わってしまったのだと、この下心でしか無い彼奴の言う気持ち悪いものを向けている事が酷く居た堪れず、言葉を選ばずに言えば、正直かなりへこんだ。
緑谷や瀬呂、それから耳郎や他の連中のお陰で前向きに彼奴との距離を少しずつ縮めて行こうと、芦戸に切っ掛けを作ってもらいデートのつもりで誘ったにも関わらず、こんな時に限って敵(ヴィラン)が出て来やがる。
初めて目の当たりにする敵(ヴィラン)に、彼奴は怯えるあまり立ち尽くしていて、そんな彼奴を危険から遠ざけたくて逃げる様に引き返させたが、どういう訳か……敵(ヴィラン)をヒーローに引き渡して彼奴を探しに行けば、彼奴は人気の無い路地で座り込んでいたのだ。
一先ず、彼奴が見付かった事に安堵するが、直ぐに辺りの違和感に気付き、それ等が物語る出来事に沸々と苛立ちが込み上げてくる。
辺りの建物の壁は強い熱に当てられたかの様に溶け落ちていて、彼奴の不自然に切り取られた髪とその隙間から見える背中には、個性を使った後の様な穴が服に空いていて、自然と彼奴が個性を使わなければならない何かが起こったのだと、怯える彼奴をどうにか安心させる様に抱き締めた。
心底守ってやりたいと思っていた相手を守れなかったのだと、自分の事よりも先に俺の心配をする彼奴に八つ当たりの様に自分の心配をしろと、更にキツく抱き締める。
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パル(プロフ) - 529zinbeizameさん» ｺﾒﾝﾄ有難う御座います！楽しんで頂けて本当に嬉しく思います！ご期待に添えられる様に頑張りたいと思います！今後ともこの作品をよろしくお願い致します！ (2022年1月23日 21時) (
レス) id: a050d7518b (このIDを非表示/違反報告)
529zinbeizame(プロフ) - めっちゃ面白くていっきみしてしまいました！！最高に面白いので更新よろしくお願いします！応援しています٩( 'ω' )و (2022年1月23日 13時) (レス) id: c26de05c7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：パル | 作成日時：2022年1月13日 20時
