【１２２】 ページ28
何も考えられなくて、動く気さえも起きなくて、ただただその場で泣き続けていた私は、それでも縋り付く様に携帯を握り締めていて、汚した挙句、背中に穴まで開けてしまった借り物の白に自分が酷く惨めだと、変に笑いが込み上げてくる。
「は、ははっ……」
追い払ったなんて、勝ったなんて、屈しなかったなんて、そんな風には思えなかった。本当に馬鹿みたいだ。変われる筈無かったのに。なりたい自分になんて程遠い現実に打ちのめされて、逃げて泣いて、怯えて自己防衛を理由に人を傷付けて……なれる訳無い。皆の様な一等星になんて、近付ける筈も無い。
そんな事を思っていた時だった。
「っ、A……！」
そう安心する声色に名前を呼ばれて振り返ると、そこには肩で息をする焦凍君が私の姿を見て大きく目を見開いていて、まるで悔いるかの様にｸﾞｯと拳を握り締めると、そのまま駆け寄り、私を抱き締めた。
「焦凍君……怪我、してない……？」
「俺の事より自分の心配しろ……！」
少し痛いくらいの力で抱き締められるのが心地良かった。安心した。もう何も怖がる必要は無いのだと、焦凍君が来てくれたのだと、怒っている焦凍君も気にならないくらい、今の私にはそれが全てだったのだ。
「……わりぃ、一人にしちまって」
暖かかった。自分を責めるかの様に僅かに震えている焦凍君の身体を抱き締め返し、大丈夫だと伝える様に軽くﾄﾝﾄﾝｯ……と、背中を擦った。
「ううん。来てくれて、ありがと……焦凍君」
焦凍君は何も悪くない。守る事も戦う事も、照らし続けてくれる事も、それがヒーローである事の何よりの証だ。今、こうして確かに私は救われている。焦凍君の優しさに甘えている。縋り付いている。だからこそ、思い知らされてしまう。
私はそういう風にしか生きられないのだと。皆の力になれる様な存在にはなれないのだと。そんな事を少しでも考えてしまった事が烏滸がましかったのだと、そう自分の浅はかさを呪ったのだ───…
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パル(プロフ) - 529zinbeizameさん» ｺﾒﾝﾄ有難う御座います！楽しんで頂けて本当に嬉しく思います！ご期待に添えられる様に頑張りたいと思います！今後ともこの作品をよろしくお願い致します！ (2022年1月23日 21時) (
レス) id: a050d7518b (このIDを非表示/違反報告)
529zinbeizame(プロフ) - めっちゃ面白くていっきみしてしまいました！！最高に面白いので更新よろしくお願いします！応援しています٩( 'ω' )و (2022年1月23日 13時) (レス) id: c26de05c7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：パル | 作成日時：2022年1月13日 20時
