【１２０】 ページ26
店内から逃げる様に飛び出して来た人達が我先にと他者を押し退けて逃げて行く姿に唖然とする事しか出来ず、ﾄﾞｸﾄﾞｸと心臓が捲し立てるかの様に嫌な予感を煽り出す。
「っ、A！お前は引き返せ！」
そう鬼気迫る様に持ってくれていた荷物を私に預け、臨戦態勢に入る焦凍君に嫌でも先程感じた悪い予感が当たってしまったのだと、得体の知れない何かに恐怖する様に足が竦んでしまう。
「敵(ヴィラン)だ！」
私を背に庇う様に立つ焦凍君の前に、砕け散ったショーウィンドウから出て来た敵(ヴィラン)が現れ、息を飲む。逃げなきゃ、逃げなきゃ。そう思うのに焦凍君を一人残して私だけが逃げて良いのかと、此処に残っても足手纏いである事は明白なのに、身体は全く言う事を聞いてはくれず、震えたまま立ち尽くしていたのだ。
「Aっ！！」
「っ！」
早く行けと言わんばかりに名を呼ばれ、自由を無くしていた身体を無理矢理動かしてショッピングモールへと引き返す。
私が居たところで邪魔になるだけだ。私が居る事で焦凍君が怪我を負ってしまうかも知れない。私には何も出来やしないんだと、逃げ出してしまった事の言い訳や免罪符ばかりが頭を駆け抜けて行く。酷い奴だと、臆病で弱虫で何も出来無い奴だと自分を罵りながら、来た道を戻る様に必死に走った。
焦凍君は守ろうと戦おうとしてくれているのに逃げる事しか出来無い自分が情けなかった。何も出来無いと分かっていても、それを選択してしまった事が申し訳無くて、そんな自分が堪らなく嫌で、悔しくて、腹が立つ。それなのに「これで良かったんだ」と、その行いを正当化しようとする自分に吐き気がする。
堪らず人気の無さそうな路地に入り、荷物を投げ捨ててその場で胃の中のものを吐き出すと、自然と涙が溢れて来る。
「ﾋｯｸｯ……うぅ……っ」
何で、私はこんなにも弱いのだろう。何で、何も出来無いのだろう。どうして、こんなにも情けないのだろうかと、その場に座り込み、建物の薄汚れた壁に凭れ掛かりながら罪悪感に押し潰される様に自己を否定し続けた。
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パル(プロフ) - 529zinbeizameさん» ｺﾒﾝﾄ有難う御座います！楽しんで頂けて本当に嬉しく思います！ご期待に添えられる様に頑張りたいと思います！今後ともこの作品をよろしくお願い致します！ (2022年1月23日 21時) (
レス) id: a050d7518b (このIDを非表示/違反報告)
529zinbeizame(プロフ) - めっちゃ面白くていっきみしてしまいました！！最高に面白いので更新よろしくお願いします！応援しています٩( 'ω' )و (2022年1月23日 13時) (レス) id: c26de05c7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：パル | 作成日時：2022年1月13日 20時
