【１１０】 ページ16
私が恋をしたのなんて、それこそ小学校の頃が最後だったと思う。当時のそれを恋と呼んで良いものかも分からないけれど、向けられる好意という名の恐怖を味わってからは、向ける事さえ出来無くなった。
「……あのさ、少なくともヒーロー目指してる奴にそういう奴は居ねぇから、少しずつ前向きに考えてみれば？」
「ま、前向きにって言われても……こ、困る」
心操君の言いたい事は好きな人でも見付ければ良いというものなのだろう。だけど、それはそれで本当に困る。誰かを好きになるという事は、その人に対して私が気持ち悪い何かを向けているという事にもなってしまうからだ。
「何で？」
「わ、私が気持ち悪い人になるのはちょっと……」
「ストーカーとか盗撮とか、下着売ってくれとか言うつもりなのか……？」
「い、言わないよ……！」
だろ？と、何だかしてやったり顔で言う心操君に、自然と恋愛感情へと見方が少しだけ緩和された様な気がする。確かに、そういう事を言う人達は気持ち悪いけれど、好意=それでは無いのだと、自分が向ける感情限定では納得出来たのだ。
「うっ……でも、好きになったからって好きになってくれるとは限らないと思うよ……？それこそ、私にそういうの向けて来る人って、変な人だけだと思うから……」
「まぁ、そこは口説き落とせよ」
「む、無理……！」
話に区切りが出来た事で時間を確認すると、校内を散歩し始めてから二時間近く過ぎていて、流石にこれ以上は皆に心配を掛けてしまうかも知れないと「そろそろ寮に戻るよ」と、心操君に告げる。
「あ、あと！心操君、連絡先交換しない……？また、その……話聞いてほしい時とか、連絡したい……です」
「そういや、携帯買ってもらったんだな」
携帯を取り出した心操君と連絡先を交換し「今日は有難う！」と、寮まで小走りで帰ると、何だか談話スペースで息を切らせた百ちゃん達が居て「どうしたの……？」と、制服姿のままの皆に首を傾げた。
基本的に制服に皺が付かない様に帰寮して直ぐに自室で楽な格好に着替えるもので、百ちゃん達が今まで何処で何をしていたのかは分からないけれど、息切れする程に激しい運動でもしていたのだろうか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 110人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
パル(プロフ) - 529zinbeizameさん» ｺﾒﾝﾄ有難う御座います！楽しんで頂けて本当に嬉しく思います！ご期待に添えられる様に頑張りたいと思います！今後ともこの作品をよろしくお願い致します！ (2022年1月23日 21時) (
レス) id: a050d7518b (このIDを非表示/違反報告)
529zinbeizame(プロフ) - めっちゃ面白くていっきみしてしまいました！！最高に面白いので更新よろしくお願いします！応援しています٩( 'ω' )و (2022年1月23日 13時) (レス) id: c26de05c7b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：パル | 作成日時：2022年1月13日 20時
