【５３】side無し ページ7
彼女は何も知らない真っ白な人間である事は付き合いの短い生徒達も理解していた。気が小さく、与えられる優しさに申し訳無さを感じ、一人になろうとするくらいだ。裏表の無い善良な人間である事には間違いないと、生徒達は彼女を見詰める。
「外界から遮断されて育ったのではないか？交通事故を切っ掛けに相澤先生が保護した可能性も無いとは言い切れ無いだろう」
「それにしても、何で教室に降って来たんだ？清水本人は無個性だし、あの状態の人間を瞬間移動させるか？普通」
当時の彼女の状態からして、事故に遭った直後だった事は明白であり、そんな人間を病院なら兎も角、ヒーロー育成の最高峰と謳われてはいるが、学校に飛ばすというのも可笑しな話である。
訳ありなのは生徒達も重々承知しているが、その訳とは一体何なのか。無邪気に自分達の個性を手放しで褒め、凄いと賞賛する純粋な心の持ち主の彼女が抱える問題とは何なのか。生徒達は彼女と日々を重ねるに連れ、それを無視する事は出来無かったのだ。
心操に話していた事が全てでは無い事は理解している。彼女は隠し事が苦手な分類の人間で、言葉を選びながらも話せる範囲内で必死に説明をしていた様に見受けられた。故に、踏み込んで良いものかと生徒達は頭を悩ませる。
膝の上にある彼女の頭を優しく撫でる八百万は「いつか、話して下さると良いのですが……」と、祈る様に零した。たった一週間という短い時間の中で、確かに芽生えた友情を大切にする様に、二度とあんな姿に彼女がならない様にと、八百万は無垢なる友に願うのだった。
―――そして、正午を過ぎた頃。談笑しながら彼女が起きるのを待っていた生徒達は、唐突にぐぅぅぅと鳴き出した彼女の腹の虫に会話を中断すると、ｸｽｸｽと微笑ましそうに笑いながら彼女を起こそうと、声を掛ける。
「おーい、腹減り清水。そろそろ飯食わねぇーと食いっぱぐれんぞー？？」
「ん……んむ、む……」
上鳴の声に煩わしそうに眉を顰め、八百万の太腿に顔を擦り付ける彼女は何かを探す様に宙に手を伸ばし始める。目覚まし時計でも探しているのかと、その手の先に居た上鳴が彼女の手に触れると、彼女はゆっくりと瞼を開き、寝ぼけ眼で上鳴を見た。
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パル(プロフ) - もぐさん» ｺﾒﾝﾄ有難う御座います!!ひぇ……長編作ばかりなので大変だったと思いますが書き手冥利に尽きると言いますか、本当に嬉しく思います！有難う御座います！！ドロドロ鬱展開は今まで書いた事が無かったのですが書いてみたくなりました！今後ともよろしくお願いします！ (2021年12月18日 18時) (
レス) id: a050d7518b (このIDを非表示/違反報告)
もぐ(プロフ) - どの作品も性癖に刺さり一気に全作読ませて頂きました！やはり文章の綴り方がお上手なのか全くタイプの違った今作も最高です！いつかドロドロ鬱展開のバッドエンド作品も読んでみたいと思いました。これからも応援しております！ (2021年12月18日 16時) (レス) id: 1c01f7244c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：パル | 作成日時：2021年12月11日 19時
