【８３】 ページ37
本当に文句も不満も何一つとして在りはしないけれど、お父さんが用意してくれた物は必要物資という意味合いが強いものばかりで、私の部屋にはテレビも無ければ、携帯や本、漫画やパソコンといった物は無い。こう言っては図々しいのかも知れないけれど、娯楽と呼べるものが何一つとして無かったのだ。
普段は学校があって、帰寮して以降も寝る前まで談話スペースで皆と過ごしている為、娯楽物の必要性は正直感じてはいないけれど、携帯は別だ。今はインターンで離れた場所に居る百ちゃんや透ちゃんの事が心配で、そうで無くてもあんな現実を知ってしまった以上、ヒーローであるお父さんをどうしても心配してしまう。
連絡手段があったとしても私には何も出来無いけれど、声だけでも聞かせてもらえると安心出来る。だからこそ、携帯を欲しがったのだ。だけど、それ以外にも目的はある。携帯という事はこの世界にも当たり前の様に存在するインターネット、つまりは皆から聞く言葉とは違う別の情報を得る事が出来る。
何も知らないままでは何も出来無い。何をするにしても、何を始めるにしても情報は必要不可欠で、先ずは知る事から始めたいと思ったのだ。
「悪いな、A。明日一緒に見に行こう」
「ご、ごめんなさい……」
「謝るな。我が儘くらい幾らでも言ってくれ。その方が俺も助かる」
こうして、私は今日から清水では無く、相澤Aとして生きる事になり、帰寮してから皆にこれからは相澤の苗字を名乗る事を伝えると、皆はそれでも私を清水と呼んだり、面倒臭がって名前で呼んでくれたりと、改めて私という存在を受け入れてくれたのだ。
そして、その翌日にはお父さんと共に携帯を契約しに向かい、二度目の雄英の外に少しばかり恐怖を覚えるも、それに屈したりはしない様に決して俯かず、目を逸らさず、その光景が当たり前などでは無いのだと、心に刻み付ける。
「……A、甘やかす訳じゃないが、あまり気負い過ぎるなよ」
そうハンドルを握り、車を走らせながらも私を見ていたお父さん。その目に私がどんな風に映っていたのかは分からない。分からないけれど、振り向いた先にあるお父さんの顔には心配が色濃く表れていた。
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パル(プロフ) - もぐさん» ｺﾒﾝﾄ有難う御座います!!ひぇ……長編作ばかりなので大変だったと思いますが書き手冥利に尽きると言いますか、本当に嬉しく思います！有難う御座います！！ドロドロ鬱展開は今まで書いた事が無かったのですが書いてみたくなりました！今後ともよろしくお願いします！ (2021年12月18日 18時) (
レス) id: a050d7518b (このIDを非表示/違反報告)
もぐ(プロフ) - どの作品も性癖に刺さり一気に全作読ませて頂きました！やはり文章の綴り方がお上手なのか全くタイプの違った今作も最高です！いつかドロドロ鬱展開のバッドエンド作品も読んでみたいと思いました。これからも応援しております！ (2021年12月18日 16時) (レス) id: 1c01f7244c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：パル | 作成日時：2021年12月11日 19時
