【７６】 ページ30
―――その日の夜の事。談話スペースで芦戸さんや上鳴君とサスペンスホラーテイストの連続ドラマを観ていると、突如画面が緊急速報に切り替わり、アナウンサーの男の人が敵(ヴィラン)に寄る大規模な襲撃を報道し始めた。そして、事件発生現場に中継が繋がった時、そこに映し出された青い炎にその場に居た皆の表情は一気に曇る。
街を一つ焼いてしまうのでは無いかと思わせる程に激しく燃え上がる青い炎。逃げ惑う人々が居る中で、そうじゃない人達がどうにかしようとする様子が生々しく映し出される。ヒーローが現着したと現場のアナウンサーがヒーローを映し出した直後、人々は事もあろうにヒーローに罵声を浴びせていたのだ。
「……なに、これ」
必死に消火に当たろうとしているヒーローに向けて、人々は野次を飛ばす。遅いだとか、何しに来たんだとか、心無い言葉が飛び交う光景に思わず口から零れてしまった声は震えていた。
「何で……」
そう困惑する中、突如視覚からの情報を遮断する様に冷たい掌が目を覆う。誰かなんて聞くまでも無く耳元に掛かった「見るな……」と、何処か苦しそうな焦凍君の声色に更に訳が分からなくなる。
「お前は見なくていい。お前は……こんな世界、見なくていいんだ」
どうして、人々を守っている筈のヒーローがあんな仕打ちを受けなければならないのか。守る為に駆け付けて来てくれたヒーローに、どうしてあんなにも心無い言葉が向けられなくてはならないのか。皆が毎日必死に努力を重ねて目指すヒーローが、どうして……人々から必要とされていないのか。私には分からなかった。
その時、寮への帰り道に焦凍君の様子が可笑しかった事を思い出す。違ったんだ。焦凍君がやるせなさを感じたのは世界の在り方では無く、今のヒーローを取り巻く社会に対してだったのだと、否が応でも察してしまう。
何がどうなってそうなってしまったのかは分からない。分からないけれど、こんなの……あんまりだ。
目元を覆う焦凍君の掌は冷たいのに、悔しくて、悲しくて流れ出した涙は熱くて、焦凍君の手を濡らしてしまうのも構わず、それに両手を重ねて泣き続けた。
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パル(プロフ) - もぐさん» ｺﾒﾝﾄ有難う御座います!!ひぇ……長編作ばかりなので大変だったと思いますが書き手冥利に尽きると言いますか、本当に嬉しく思います！有難う御座います！！ドロドロ鬱展開は今まで書いた事が無かったのですが書いてみたくなりました！今後ともよろしくお願いします！ (2021年12月18日 18時) (
レス) id: a050d7518b (このIDを非表示/違反報告)
もぐ(プロフ) - どの作品も性癖に刺さり一気に全作読ませて頂きました！やはり文章の綴り方がお上手なのか全くタイプの違った今作も最高です！いつかドロドロ鬱展開のバッドエンド作品も読んでみたいと思いました。これからも応援しております！ (2021年12月18日 16時) (レス) id: 1c01f7244c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：パル | 作成日時：2021年12月11日 19時
