【４９】 ページ3
心操君には初めて会った時に軽くその話はしていて、思えば皆にはまだ何も話していなかった事に気付く。何も聞いて来ないから私も頭から抜け落ちていたけれど、普通ならあんな大怪我を見て気にならない人間は居ないだろう。
「うん。信号が赤なの気付かなくて、そのまま携帯弄ってて、イヤホンで大音量で音楽聴いてて……気付いたらトラックに轢かれてて……」
「トラックって……よく生きてたな」
生きてたと言うより、私の場合は生かしてもらったと言った方が良いのかも知れない。本当なら死んでいた筈で、この世界に飛ばされたからこそ一命を取り留めたんだと思う。リカバリーガールの個性について皆から話を聞いた時、朧気だったその輪郭がはっきりと見えてしまったのだ。
私が居た世界では到底起こりえなかった、個性という特別な力の恩恵で私は生かされている。個性を用いた治療はこの世界では当たり前で、だからこそ、私は生きる事が出来たのだろう。
僅かに呆気に取られている心操君に「おとっ、じゃなくて、相澤先生や皆が助けてくれたんだと、思う」と、意識の無かった私には本当の事は分からないけれど、あんな状態の人間を前に皆が何もしなかったなんて事は絶対に無いと確信出来る。
「それで、何で雄英？しかもヒーロー科に転校って話飛び過ぎだろ」
「え、えーっと……なんて言うか、その事故が原因でお母さんに会えなくなって、身寄りが無くなっちゃって、それで……その、相澤先生に引き取られたの」
んん？と、困惑げに眉間に皺を寄せながら難しそうな顔をする心操君に、流石に本当の事を話す訳にもいかず、部分的で本当に申し訳無いと思いながらも結局は保護を受けた形なのだと説明した。
「保護なら尚更クラスの奴等に何も言ってねぇの拙いんじゃねぇの？」
「えーっと、皆はそういうの知らないと思う……」
「は……？」
「相澤先生が訳ありの転校生ってアバウトな感じで説明しちゃってるみたいで、その……事故に遭った事も話してなくて……」
そう言うと、何故かぎこちなく後ろを向く心操君。差して気にも止めずに「話すタイミングも無くて……」と、言葉を続けると、心操君は軽く頭に手を当てながら溜め息を付き「通りでこうなる訳だ」と、前を向いた。
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パル(プロフ) - もぐさん» ｺﾒﾝﾄ有難う御座います!!ひぇ……長編作ばかりなので大変だったと思いますが書き手冥利に尽きると言いますか、本当に嬉しく思います！有難う御座います！！ドロドロ鬱展開は今まで書いた事が無かったのですが書いてみたくなりました！今後ともよろしくお願いします！ (2021年12月18日 18時) (
レス) id: a050d7518b (このIDを非表示/違反報告)
もぐ(プロフ) - どの作品も性癖に刺さり一気に全作読ませて頂きました！やはり文章の綴り方がお上手なのか全くタイプの違った今作も最高です！いつかドロドロ鬱展開のバッドエンド作品も読んでみたいと思いました。これからも応援しております！ (2021年12月18日 16時) (レス) id: 1c01f7244c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：パル | 作成日時：2021年12月11日 19時
