【６３】 ページ17
こんな風に真摯に向き合おうとしてくれる焦凍君に対して、このまま何も話さないのは返って失礼だと、ｷﾞｭｯと膝の上で拳を握り締め、自分が異端である事を告げる事への恐怖心を無理矢理押さえ付けながら、ゆっくりと息を吐き出す。
本当は怖い。異物で異端で、同じ人間なのに皆とは違うのだと告げる事が、怖くて堪らない。でも、此処で何も話さなかったらきっと、この先もずっと何も言えなくなってしまう。腫れ物みたいに気遣われるのは嫌だ。本当は対等で居たいのだと、心の中で校訓を叫ぶ。自身を奮い立たせるのは今なのだと、この時の為の言葉なのだと。
「焦凍君、驚かないでって言う方が無理なのも分かってるけど……その、今から話す事は全部ホントの事で、私自身もよく分かってない事だから上手く説明出来無いけど、それでも聞いてくれる……？」
意を決してそう伝えると、焦凍君は「ああ、話してくれ」と、心做しか安堵する様に柔く眉を下げていて、少しだけ緊張が和らいだ様に思う。だけど、和らいだ緊張感が此処で「実は、この世界の人間じゃないの」と、吐き出す事を躊躇わせた。
よくよく考えれば、そんな事を急に言い出してイタイ奴だと思われる可能性も否定出来無い。寧ろ、焦凍君の場合は素で「頭大丈夫か？」なんて心配されそうで、それはそれで中々に辛いものがある。
「……うん、分かった」
「何がだ？」
「そもそも、私が住んでた場所……？には、個性とかヒーローとか、そういうのが無くて……」
「……は？」
御尤もな反応を見せる焦凍君に苦笑しながら、なる様になれば良いと、順を追って説明する。個性もヒーローも敵(ヴィラン)も存在しない世界で何不自由無く暮らしていた事、ある日突然事故に遭い、それが切っ掛けでこの世界に飛ばされてしまった事、家族も居なければ家も無く、戸籍すら無い私をお父さんが引き取ってくれた事を私が把握している範囲で話した。
焦凍君は終始難しい顔をしていたけれど、何も言わずに最後まで耳を傾けてくれて「えっと……そういう訳で、私は個性やヒーローの知識が全く無かった訳です……はい」と、全てを話し終える頃には何だか気持ちが軽くはなっていたけれど、焦凍君の顔をまともに見る事が出来無かった。
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パル(プロフ) - もぐさん» ｺﾒﾝﾄ有難う御座います!!ひぇ……長編作ばかりなので大変だったと思いますが書き手冥利に尽きると言いますか、本当に嬉しく思います！有難う御座います！！ドロドロ鬱展開は今まで書いた事が無かったのですが書いてみたくなりました！今後ともよろしくお願いします！ (2021年12月18日 18時) (
レス) id: a050d7518b (このIDを非表示/違反報告)
もぐ(プロフ) - どの作品も性癖に刺さり一気に全作読ませて頂きました！やはり文章の綴り方がお上手なのか全くタイプの違った今作も最高です！いつかドロドロ鬱展開のバッドエンド作品も読んでみたいと思いました。これからも応援しております！ (2021年12月18日 16時) (レス) id: 1c01f7244c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：パル | 作成日時：2021年12月11日 19時
