【６２】 ページ16
―――私が居た世界の大好きだったアーティストの歌を口遊む。この世界では聴く事の出来無い、元の世界の唯一無二の歌声、何処か寂しい小鳥の唄。大海を渡り切る為、傷付いた翼で飛び続け、太陽に焦がされた可哀想な命の唄だ。
好きだった。お小遣いを貯めて、初めて買ったそのCDは今でも私の宝物で、今やCDなんて買わなくなってしまったけれど、携帯に真っ先にダウンロードした曲はそれだった。何度も聴いては涙腺を緩ませ、お母さんや友達に呆れられる程にその歌ばかり聴いていて、気付けばそのアーティストを追い掛ける様になっていたのだ。
「……何の歌だ？それ」
「っ！？」
突然掛けられた声に驚いてしまい、思わず肩をﾋﾞｸｯと跳ね上がらせなからその人物へと視線を向けると、そこには焦凍君が居て、今までずっと俯いていたからか、いつの間にか空が茜色に染まっていた事にも僅かに驚く。
「え、あ……その、何で……」
「いつまで経っても戻って来ねぇから、どっかで転けてんじゃねぇかと思って見に来た。それと、お前に詫びてぇ」
隣、良いか？と、聞いてくる焦凍君に取り敢えず頷けば、焦凍君は隣に腰を下ろすと「昼間は……悪かった」と、謝罪を口にする。本当は謝る必要なんて無いのに、この世界の当たり前を指摘しただけなのに、こうして焦凍君に必要の無い謝罪を口にさせている事が心苦しかった。
「お前の事情も知らねぇで、無神経だった。悪い」
「……違うよ。焦凍君は別に何も悪くなくて、私が普通じゃないだけだから……その、気にしなくて良いと言うか、気にしないでほしい……です」
謝られたり、気にされる方がずっと苦しい。それこそ、腫れ物を触るみたいに気遣われる方が余っ程堪えてしまう。こればっかりは仕方の無い事だと、私が割り切ってしまえば済む話で、焦凍君や皆がその事を気にする理由なんて何処にも無いのだから。
「私、自分が可笑しい事も分かってる。分かってるけど、それを改めて指摘されると……どうしても嫌な事ばかり頭に過ぎっちゃって、酷い言葉を言ってしまいそうになる……」
「寧ろ言ってくれた方が助かる。そうじゃねぇと分からねぇ。お前、褒める事以外は周りに気遣って何も言わねぇだろ」
言いたい事があるなら、言ってくれ。と、私に吐き出させる様に言葉を紡いだ焦凍君は「何言われてもキレたりしねぇ」と、言葉を続けた。
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パル(プロフ) - もぐさん» ｺﾒﾝﾄ有難う御座います!!ひぇ……長編作ばかりなので大変だったと思いますが書き手冥利に尽きると言いますか、本当に嬉しく思います！有難う御座います！！ドロドロ鬱展開は今まで書いた事が無かったのですが書いてみたくなりました！今後ともよろしくお願いします！ (2021年12月18日 18時) (
レス) id: a050d7518b (このIDを非表示/違反報告)
もぐ(プロフ) - どの作品も性癖に刺さり一気に全作読ませて頂きました！やはり文章の綴り方がお上手なのか全くタイプの違った今作も最高です！いつかドロドロ鬱展開のバッドエンド作品も読んでみたいと思いました。これからも応援しております！ (2021年12月18日 16時) (レス) id: 1c01f7244c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：パル | 作成日時：2021年12月11日 19時
