【６１】 ページ15
何とか街灯に掴まり、腕と膝に力を込めながら踏ん張って立ち上がろうとするけれど、足は日頃の成果もあってそれなりに力が入る様にはなったけれど、自分の体重を引っ張り上げる力は腕には無かった様で……
「ぷるすっ、うるとら……！」
そう叫んで見るけれど、コアラの様に街灯に掴まる不格好な姿から何も改善せず、見兼ねた爆豪君が私の後ろ襟を猫でも掴むかの様に掴み、引き上げてくれたお陰で何とか街灯に掴まり立ちする事が出来たのだ。
「何やっとんだ、テメェ……」
「うっ……ごめんなさい。腕の筋力も付けなきゃダメだなぁ、これ」
「今は足腰の筋力トレーニングをメインにやってるんだっけ？」
歩行器を傍に寄せてくれる緑谷君に申し訳無く思いつつ、街灯から歩行器に掴まり「う、うん。先ずは歩ける様にならないとダメだから……」と、返した。
先ずは一人でも大丈夫な様に筋力を元通りに戻す事から始め無ければならない。普通に歩いて、走って、誰にも迷惑を掛けない様にする事から始めなければ、このままだと皆に心配ばかり掛けてしまう。
「……清水さん」
そう何処か神妙な顔付きで呼ばれ、首を傾げながら緑谷君へと視線を向けると、緑谷君は「あのね、轟君が君に謝りたいって、言ってたよ」と、話す。
「皆も心配してたし、そろそろ寮に帰らない……？」
この世界にとって、普通じゃない私が悪い。焦凍君は当たり前の事を指摘しただけで、何一つとして謝る必要なんて無くて、ただ……この世界の色に馴染めない私がそれに添えない事に、八つ当たりをしてしまいそうになるから、一人になりたかったのだ。
緑谷君の言葉に「日が暮れるまで、外に居たらダメ……ですか」と、聞くと緑谷君は困った様な顔をしながらも「うん、分かった」と、私の意を汲んでくれて、爆豪君と共にこの場から離れて行く。そんな二人の背中を軽く見送った後、私は少し歩いた所にあったベンチに腰を下ろし、溜め息を吐き出した。
やっぱりこの世界は優しい真綿の地獄なのかも知れない。異質な私には、この世界に居場所なんて無いのかも知れない。受け入れてくれる皆に馴染めず、その色に染まる事も出来ず、同じになる事も無い。これは、ある種の社会不適合者なのだろう。そう考えるとやっぱり物悲しくて、寮に戻ろうとは思えなかったのだった。
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パル(プロフ) - もぐさん» ｺﾒﾝﾄ有難う御座います!!ひぇ……長編作ばかりなので大変だったと思いますが書き手冥利に尽きると言いますか、本当に嬉しく思います！有難う御座います！！ドロドロ鬱展開は今まで書いた事が無かったのですが書いてみたくなりました！今後ともよろしくお願いします！ (2021年12月18日 18時) (
レス) id: a050d7518b (このIDを非表示/違反報告)
もぐ(プロフ) - どの作品も性癖に刺さり一気に全作読ませて頂きました！やはり文章の綴り方がお上手なのか全くタイプの違った今作も最高です！いつかドロドロ鬱展開のバッドエンド作品も読んでみたいと思いました。これからも応援しております！ (2021年12月18日 16時) (レス) id: 1c01f7244c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：パル | 作成日時：2021年12月11日 19時
