【４１】 ページ42
逆の立場だったら、私も気が気じゃなかったと思う。どんなに平気だと言われても心配してしまうだろうし、申し訳無い気持ちで一杯だった皆の優しさも、きっと同じものを向けていただろう。それを理解した途端、涙が止まらなかった。
私は生きている。皆に助けてもらいながら、与えられる優しさに救われながら、生きている。だからこそ、焦凍君の言葉が痛い程胸に落ちてきた。
「ありがとう……っ」
「変に気遣われる方が余っ程堪える。だから、遠慮すんなよ」
「うん……」
ゆっくりと額から離れた右手で私の頭を元の位置に押し返す焦凍君は医務室に向かう道中、何度か小さな段差に詰まる車椅子に苦戦していて、その度に「大丈夫か？頭打ってねぇか？」と、何処か焦る様に聞いて来る姿が何と無く幼く見えてしまい、笑ってしまったのだ。
「わりぃ……」
「大丈夫。スリル満点で楽しいよ……？」
「お前、熱出てる癖に楽しんでる場合かよ」
「だって、焦凍君が焦るの、何だか面白くて」
そんな事を話しながら到着した医務室には、小さなお婆さんが居て、焦凍君が「リカバリーガール、熱測ってやってくれ」と、そうヒーロー名の様な呼び方をしていて、このお婆さんもヒーローなのだと驚いてしまう。
「ああ、アンタかい。また熱出したのかい？」
「あ、えと……全然自分じゃそんな感じはないんですけど、熱出てるみたいで……その」
リカバリーガールと呼ばれたお婆さんは体温計を私に手渡し、熱を測る様に額に触れ出したのでその間に体温計を脇に挟むと、リカバリーガールの表情が険しいものへと変わった。
「アンタ、これで自覚症状が無いかい？」
「はい……全く」
「ちょっとやそっとの熱じゃないよ！轟、この子をベッドに寝かしてやんな。体力落ちてるこの子に個性は使えないんだ、早くしな」
言われるがまま車椅子をベッドまで押してくれた焦凍君は「嫌かも知れねぇが、少し抱えるぞ」と、お父さんがそうしてくれた様に焦凍君にも横抱きにされてしまい、余計に熱が上がってしまうんじゃないかと顔を両手で隠す。その時、ﾋﾟﾋﾟﾋﾟｯと体温計が鳴った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 138人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
パル(プロフ) - 柴ぬいさん» ｺﾒﾝﾄ有難う御座います!!知らないからこその新鮮さや衝撃などなど、普通だったらこういう反応になるかな？と考えながら書いていたのでこうしてその点に関してのｺﾒﾝﾄ頂けて嬉しく思います！また表現についても感想下さり、こちらこそ本当に有難う御座いました！ (2023年3月14日 18時) (
レス) id: 6636808e83 (このIDを非表示/違反報告)
柴ぬい - めっちゃ最高でした！（全部読みました！）ヒロアカを知らない体での転生ものは初め読み進めている時とても驚きました！また、胸にｽﾝｯと落ちてくる表現の仕方が半端なかったです！素敵で平和な世界線でのお話を読めて幸せです！ありがとうございました！！ (2023年3月14日 16時) (レス) id: c5d3bd3937 (このIDを非表示/違反報告)
パル(プロフ) - ひながきさん» ｺﾒﾝﾄ有難う御座います!!楽しんで頂けるか分かりませんが、楽しんで頂けると幸いです！貧弱綺麗事万歳夢主をよろしくお願いしますww (2022年10月2日 23時) (レス) id: 6636808e83 (このIDを非表示/違反報告)
ひながき(プロフ) - まだ呼んでいないのにコメントをするという奇行をさせていただきます。要注意の【貧弱綺麗事万歳夢主】という語彙が好きです。これから読まさせていただきます、笑 (2022年10月2日 15時) (レス) id: 4bea1154e8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：パル | 作成日時：2021年11月11日 23時
