【２１】 ページ22
―――百ちゃんは私に寮内を案内してくれると言ってくれて、いざソファーから立ち上がろうとすると、この言う事を聞かない身体は危うくソファーから落っこちてしまいそうになった。それを皆が素早く支えてくれて、事無きを得た時、私は初めて個性というものを目の当たりにする事になる。
「そうですわね……リハビリも兼ねて歩行器を出しますわ」
「出す……？」
「ええ、私の個性ですの」
そう何故か服を捲し上げ様とする百ちゃんに「百ちゃん！？」と、驚くけれど、皆は慣れているのか、男の子達は目を逸らしていて、女の子達はただただ笑顔で見守っていた。そんな中、百ちゃんのお腹辺りから何やら金属の何かがじわじわと出て来て、それがﾎﾟﾝｯと勢い良く飛び出すと同時に理解する。
「これが……個性？」
「ええ。確か、Aさんは個性に免疫が無いと相澤先生から伺っていますわ」
「す、凄い……！百ちゃん、凄い！魔法みたい」
出て来た歩行器に触れ、その質感もちゃんと金属や革で、お腹から出てきた事にも驚いたけれど、それ以上に魔法の様なそれが、私の目には恐怖では無く、純粋に素晴らしいモノに見えて仕方が無かった。
「魔法だ、凄い……！」
「個性ですわ。他にも様々な個性がありますのよ？」
「そっか、人口の約八割が発現する特別な力なんだよね……？凄い、カッコイイ」
初めて見る個性に興奮していると、百ちゃんと近場に居た轟君が立ち上がるのを手伝ってくれて、歩行器を支えに寮内を歩きながら個性について話してくれた。
人口の約八割が個性を持っている。それはつまり、約二割の人は個性の発現が無い、無個性と呼ばれる存在なのだという。そして、私には何も無い事から、私も無個性なのだろうと、元の世界では当たり前のそれを再認識する。
「とろ……じゃなくて、とろのき、とどもき……？君の個性も何か出るの……？」
「もう焦凍で良いぞ。そっちの方が呼びやすいだろ」
「ご、ごめん。わざとじゃないんだけど、舌が勝手に……その、ごめん」
名前もまともに言えない自分が本当に情けない。これ以上間違えるのも失礼だと、折角の申し出に焦凍君と呼ばせてもらう事にしよう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 138人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
パル(プロフ) - 柴ぬいさん» ｺﾒﾝﾄ有難う御座います!!知らないからこその新鮮さや衝撃などなど、普通だったらこういう反応になるかな？と考えながら書いていたのでこうしてその点に関してのｺﾒﾝﾄ頂けて嬉しく思います！また表現についても感想下さり、こちらこそ本当に有難う御座いました！ (2023年3月14日 18時) (
レス) id: 6636808e83 (このIDを非表示/違反報告)
柴ぬい - めっちゃ最高でした！（全部読みました！）ヒロアカを知らない体での転生ものは初め読み進めている時とても驚きました！また、胸にｽﾝｯと落ちてくる表現の仕方が半端なかったです！素敵で平和な世界線でのお話を読めて幸せです！ありがとうございました！！ (2023年3月14日 16時) (レス) id: c5d3bd3937 (このIDを非表示/違反報告)
パル(プロフ) - ひながきさん» ｺﾒﾝﾄ有難う御座います!!楽しんで頂けるか分かりませんが、楽しんで頂けると幸いです！貧弱綺麗事万歳夢主をよろしくお願いしますww (2022年10月2日 23時) (レス) id: 6636808e83 (このIDを非表示/違反報告)
ひながき(プロフ) - まだ呼んでいないのにコメントをするという奇行をさせていただきます。要注意の【貧弱綺麗事万歳夢主】という語彙が好きです。これから読まさせていただきます、笑 (2022年10月2日 15時) (レス) id: 4bea1154e8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：パル | 作成日時：2021年11月11日 23時
