【ヒロアカ】Question (ページ29)

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【２８】ページ29

―――誰かを待ち続けるという事は、こんなにも寂しい事だっただろうかと、音の無い部屋で彼女の帰りを待っていた僕は22時に差し掛かろうとしている時計に目を向け、溜め息を付く。

仕事が忙しいのか、帰宅途中に何かあったのだろうか。時間が経てば経つ程、僕は彼女の身に何かあったのでは無いかと落ち着かなくなっていた。

迎えに行くべきか……？いや、そんな事をすれば確実に家から追い出されかねない。それこそ、そんなに動ける元気があるなら帰れと問答無用でハリセン片手に怒鳴られても文句は言えないだろう。

まるで、主人の帰りを待つ犬の様だと時間を気にする様に何度も時計を見る自身に呆れてしまう。恐らく、彼女がこんな僕を知った日には気持ち悪いとドン引きするか、或いはお腹を抱えて盛大に馬鹿にするのかも知れない。

だけど、それでも良いから早く帰って来て欲しいと思ってしまう。それはきっと、この誰かが居た事を物語る家が、僕のそれとは似ている様で全く違う雰囲気を醸し出しているからなのだろう。

自宅からこの家に戻って来た時、何故か誰も居ない筈なのにリビングには誰かがそこに居る様な……気配では無く、感覚と言えば良いのだろうか。不思議なその感覚が妙に暖かくて、だけど……それは僕が決して触れてはならないものだと何故か理解していた。

彼女はこの家でどんな風に生活を送っていたのだろうか。一人で暮らす事に寂しさを覚えた事は無いのだろうか。彼女の家族は……どうしているのだろうか。

そんな事を考えていると、不意にｶﾁｬ……と玄関先から音が聞こえ、その音に彼女が帰って来たのだと出迎えに行く。そして、彼女を目に捉えた時、ずっと感じていた寂しさの理由に気付かされた。

一人は平気だ。一人暮らしをしている事もそうだけど、一人の時間を気にした事も寂しいと思った事も子供の頃に比べれば殆ど無いと言っても過言では無いだろう。だけど、それは元々一人だったからに他ならない。

誰かが居る筈の場所で一人で過ごす事の寂しさ、孤独、疎外感。そんなものを感じていた僕は帰宅した彼女の存在にその全てが満たされて行くのが分かった。