【ヒロアカ】Question (ページ20)

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【１９】ページ20

何時何処で誰に見られているかも分からない。この間なんて、スーパーのお惣菜コーナーに居ただけで食生活を心配される様な呟きが載せられていて、何だか居た堪れない気持ちになった事は言うまでも無いだろう。

その点、彼女は全くそういったものは感じられない。一応、僕がデクである認識はあるのだろうけど、どうでも良いと思ってくれているのか、変に気遣われる事も無く、過剰な心配も無ければ、応援なんてものからは縁遠い言葉の数々を情け容赦無く向けてくる。

だからだろう。変に気を遣う事も無く、こうして無防備な姿を晒す事が出来ているのは。

「瀬崎さんは……僕と言うより、デクをどう思う……？」
「マヌケ」
「うっ……」

何気無く気になったそれを問い掛ければ、即答する彼女に看病をしてもらっている手前、何も言い返す事が出来ず、それでも彼女らしい辛辣な言葉に何だか気が抜けてしまう。

「ボクは……お前に何も期待してない。羨望も憧憬も、それこそどうでも良い。こんな無様で情けないおマヌケヒーロー様に掛ける期待なんて微塵も無いし、微塵も無いからこそ……失望もしない」

何を思ってそう告げるのか、僕には理解する事は出来無かったけれど、恐らく彼女は、僕の何気無い問いの真意を見抜いていたのかも知れない。そう静かに告げられた言葉に肩の力が自然と抜けて行くのが分かった。

期待していたのは僕の方だ。彼女ならそう答えてくれるのではないかと、飾らない言葉で、僕の事など全く気遣う事も無く、容赦無く思っている事を聞かせてくれるのではないかと、期待した。

期待通りと言うと、策士みたいに聞こえてしまうけれど、彼女は僕が欲しかった言葉をくれた。期待を持たないからこそ、こんな状態にある僕に失望なんてしない。世間が抱いているであろうデクとしての僕では無く、僕を僕として見た上で言葉を掛けてくれる。

「そっかぁ……うん、何だか、嬉しいや」
「世間で言う所の期待の若手ヒーロー様はマゾだったと？いやはや、それについては失望を通り越してドン引きレベルなんだけど？」
「違うから。でも……有難う」

彼女は本当に不思議な人だ。心が安らぐと言えば良いのか、自然体で居られると言えば良いのか。調査対象としてでは無く、別の形で出会いたかったと思いながら、僕はそのまま眠りへと落ちていったのだった。