【ヒロアカ】Question (ページ17)

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【１６】ページ17

僕はあまり詳しくは知らないけれど、確かに緊急性がある事態を当事者である患者さんが自ら知らせる事は難しいのかも知れない。特に、今の医療機関は入院を推奨していない。その為、入院している人は高齢者が多いのが現状だ。高齢者の緊急性は命に関わる事だってあるだろう。それを当人が知らせられる状態ではないからこその緊急性だとも言えてしまう。

「何かしらの訴えがあったところで、バイタル的に問題が無ければ、その訴えも差して重要視されない。例外もあるけど、大抵は○○さんがこんな事言ったよー？くらいで終わる」
「そういうもんなの……？」
「ヒーローだって、そういうのあるんじゃないの？」

彼女の言う“そういうの”が何を指しているのかイマイチ理解出来ず「あるかなぁ……」と上を見た所で答えなんて出やしないのに、視線を上に向けて考えてみるけど、少なくとも僕にはそういう感覚はよく分からなかった。

そんな僕に視線を向ける彼女は、察しの悪い人間を相手する様に「程度が知れてる困り事をヒーローが一々買って出てる訳じゃないだろ」と言う。

「それと一緒で、気分的な不調や家に帰りたいだの何だの……そういう事をわざわざナースコールで言ってくる患者の相手をする程、看護師も暇じゃないのさ」

そう口で言いつつも、調査初日に見た彼女は自分の担当でも無い病室に訪れ、患者さんの話を真摯に聞いていた。今思えば、恐らく彼女に声を掛けていた看護師がその病室を受け持っていたのかも知れない。仮にそうだとするなら、あの時彼女が素っ気無い態度を取っていた理由も自然と分かってしまう。

嗚呼、本当に……不器用な人だ。憎まれ口を叩く為、そうは見えないのかも知れないけれど、こうして話してみると彼女の……瀬崎Aという人の本質が見えてくる。

「瀬崎さん」
「……何？」
「それでも、君は話を聞くんじゃないの？忙しくても、そんな患者さんを蔑ろには出来無いんじゃないかな」

彼女は驚いた様に目を見開く。それが図星である事の何よりの証拠だった。だけど、彼女はそれを素直に受け止める器用さが欠けてしまっている。だから、僕が言った言葉に噛み付くかも知れないと「何と無くだけど、君はそういう人なんじゃないかなって……」と付け足しながら頬を指で掻く。